SFやスリラーの皮をかぶった
社会問題を描いた作品

 今年のカンヌは、『パラサイト』をはじめ、コメディやSF、スリラーなどいわゆるジャンル映画のフォーマットにのって、社会問題を描く、という作品が目立った。

 セネガル系フランス人のマティ・ディオプが長編第一作でいきなりグランプリを受賞した『アトランティック』(原題)もSFという形で、アフリカにおける搾取の問題を描いていたし、審査員賞の『バクラウ』(原題)もオカルト風味で格差を描いた。

 今年はジム・ジャームッシュの開幕作『ザ・デッド・ドント・ダイ』(原題)もゾンビ・コメディだったし。

 そんな中、完成度は高かったのに割をくってしまったのが、常連ペドロ・アルモドバルの自伝的作品『ペイン・アンド・グローリー』(原題)だ。その話は、また次回に。

石津文子 (いしづあやこ)

a.k.a. マダムアヤコ。映画評論家。足立区出身。洋画配給会社に勤務後、ニューヨーク大学で映画製作を学ぶ。映画と旅と食を愛し、各地の映画祭を追いかける日々。執筆以外にトークショーや番組出演も。好きな監督は、クリント・イーストウッド、ジョニー・トー、ホン・サンス、ウェス・アンダーソンら。趣味は俳句。長嶋有さん主催の俳句同人「傍点」メンバー。俳号は栗人(クリント)。「もっと笑いを!」がモットー。片岡仁左衛門と新しい地図を好む。

2019.08.02(金)
文・撮影=石津文子