いつからか「太平洋のハリウッド」と呼ばれるようになったカウアイ島。その歴史はまさにハリウッド映画の歴史ともいえる。カウアイ島で初めてハリウッド映画が撮影されたのは1933年。それ以来この島で、大きな作品のみ数えても約75本の映画が撮影されている。

 カウアイ島がハリウッド映画を通して注目されるきっかけとなった映画がある。1957年に撮影されたミュージカルの傑作『南太平洋』だ。この映画には、北海岸にあるハエナのマカナ・ピークが幻の島「バリハイ」として登場する。幻想的でロマンチックなラブ・ストーリーとともに映し出される、ハナレイ湾の眺めやルマハイ・ビーチなどのカウアイ島の風景が、一躍注目を集めることになった。

カウアイ島北海岸のハエナの、映画『南太平洋』で幻の島バリハイとして登場したマカナ・ピーク
Photo by Kicha Witte

 また1961年に撮影された『ブルー・ハワイ』は当時、一世を風靡していたエルビス・プレスリーを主演に起用し、音楽・ファッションも含め当時の若者の心をしっかりと捉えた。ココパームス・ホテルのコテージのシーン、そしてラグーンにカヌーを浮かべたウエディング・シーンは、「ハワイアン・ウエディング・ソング」とともに、世界中にハワイアン・ウエディングの魅力を知らしめた。1970年代にカウアイ島がハネムーン先の人気ナンバーワンになったのも、この映画の影響。「ハネムーン・アイランド」と呼ばれるようになったのも、この頃からだ。

 そのロマンチックなカウアイ島が、イメージをガラリと変えて登場したのが、1992年の『ジュラシック・パーク』だ。船かヘリコプター、あるいはトレッキングでしか行くことのできないカウアイ島の秘境、ナパリ・コーストの、壮大で神秘的な風景が物語の展開をいっそう盛り上げた。北海岸のリマフリ・ガーデン、滝つぼをヘリコプターが垂直に下降してランディングするシーンが撮影されたハナペペのマノワイオプナの滝、巨大な木の根元に恐竜の卵を発見するシーンが撮影されたアラトン・ガーデンなど、緑豊かなカウアイ島の自然が惜しみなく紹介されている。

 そして、2011年からカウアイ島の北海岸が再びブームとなっている。2011年に封切られた『パイレーツ・オブ・カリビアン/生命の泉』と今年封切られた『ファミリー・ツリー』(英語のタイトルは「Descendants」)の影響だ。

カウアイ島に到着した『パイレーツ・オブ・カリビアン/生命の泉』のブラック・パール号。装飾を施す前の姿は珍しい

<次のページ> 『パイレーツ・オブ・カリビアン』の「生命の泉の入り口」は……

2012.11.08(木)