蜷川幸雄の「遺言」を
胸に刻み続けて……

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 「30手前でやりたかった」と言う、岡田将生さんの夢が、今年ひとつ叶う。それはシェイクスピアの舞台を踏むということ。

 平成元年生まれの岡田さんはこの夏、30歳に。記念すべき20代の最後に『ハムレット』に挑戦するのだ。

「僕の初舞台は、蜷川幸雄さんの演出作品だったのですが、そのときに、『君とシェイクスピアをやりたい』と蜷川さんが言ってくださって、以来ずっとシェイクスピアにどこか想いを傾けていました。僕はまだ舞台経験が浅いので、早かったかな? という不安もありますが、お話をいただいたときは本当に嬉しかったです」

 シェイクスピア劇は、非日常の空間を味わえることが楽しいと言う。つい先日も友人の松坂桃李さんの『ヘンリー五世』を観てきたばかり。

「とても刺激的でした。同世代の方がシェイクスピアをやっているということはすごく勇気をもらえるし、嫉妬もするし、次は僕がやるぞ! という気持ちにもなります」

 今回の『ハムレット』は、英国ロイヤル・ナショナル・シアターのアソシエイトディレクターを務めるサイモン・ゴドウィン氏が日本で初演出する。氏は昨年、岡田さんが出演した『ニンゲン御破算』を観劇した。

「その日はすごく緊張してしまいました。『君に(舞台は)向いていない』と言われたらどうしようと考えてしまって(笑)」

 『ニンゲン御破算』もその前の『ゴーゴーボーイズ ゴーゴーヘブン』も、舞台の岡田さんは、芝居の神様が降りてきたかのように、生き生きと弾けきって、観客を魅了した。

 また、昨年のドラマ「昭和元禄落語心中」では、過去を背負う噺家を70代まで演じ切った。これだけ力があるのに、不思議なくらい謙虚。

「『~落語心中』は、監督や落語の師匠と、年代ごとの差をどうつけるかという相談ができましたし、落語の稽古をする時間もいただけたのが本当によかったです」

 いま出演中の「なつぞら」も、リハーサルがあるのがありがたいと言う。稽古が好き。稽古場への行き帰りは一人で移動し、役について考える。そういう時間が嫌いではない。

 もともと理数系で、建築関係の学校に通っていた岡田さん。建築に基礎が大事なように、役をじっくりと自分に落とし込む作業が、あの演技を支えているのだろう。

俳優をこれほど続けられるとは

「高校生くらいからこの仕事を始めて、まさかこんなに続けられるとは思っていなかったので、今年で30歳になると思うとびっくりします。メンタルも強い方ではないのに(笑)」

 続けられている理由は、いい人、いい仕事との出会いだと言う。自分は「ハムレットのように腹をくくり、一本道を突き進むことはできない」と語る岡田さんだが、迷い続けることが、きっと俳優としての魅力につながっている。

 令和元年、岡田さんの変容はまだまだ続きそう。

岡田将生(おかだまさき)

東京都出身。2006年にデビュー。11年、『告白』『悪人』で、日本アカデミー賞優秀助演男優賞を受賞。近年の主な出演作に映画『銀魂』シリーズ(17、18)、『伊藤くんA to E』(18)、ドラマ「ゆとりですがなにか」 (16 日本テレビ)、「昭和元禄落語心中」 (18 NHK)など。現在、連続テレビ小説「なつぞら」(NHK)に出演中。8月に舞台 『ブラッケン・ムーア~荒地の亡霊』に出演。

シアターコクーン・
オンレパートリー
2019
DISCOVER WORLD
THEATRE vol.6
『ハムレット』

英国のサイモン・ゴドウィン演出によるシェイクスピア劇。
公演期間 2019年5月9日(木)~6月2日(日)
場所 Bunkamura シアターコクーン
電話番号 03-3477-3244(Bunkamura)
https://www.bunkamura.co.jp/
※大阪公演あり

Column

C&C インタビュー

今月のカルチャー最前線。一押しの映画や舞台などに登場する俳優にお話を聞いています。

2019.05.07(火)
文=黒瀬朋子
撮影=佐藤 亘
スタイリング=大石裕介
ヘア&メイクアップ=FUJIU JIMI

CREA 2019年6月号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

この記事の掲載号

なんでこんなにパンが好き?

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