マウイ島の海は浅い。ハワイ諸島8島のなかでも中間に位置し、モロカイ島、ラナイ島、カホオラヴェ島の3島との距離が近いマウイ島の海は、ハワイ諸島の他の島々よりも、周りの海に浅い部分が多い。そのため季節になると、クジラが多く見られるのだ。

 北太平洋に生息しているザトウクジラは約22000頭、その6割の約12000頭が1月から4月ごろにかけてハワイを訪れる。彼らのハワイ滞在の目的はなんと出産。クジラ到来のニュースからしばらくすると、母クジラと赤ちゃんクジラ、エスコートを担当する雄のクジラたちの一群が、ジャンプしたりヒレを使った特有の動きをしながら泳いでいる姿を、海岸沿いからでも見ることができる。

マウイ島と他の島との間の海の深さは約180メートル程度。それが母クジラの出産と子育てに最適というわけだ。生まれたばかりの赤ちゃんクジラの重さは約1300キロ、体長は約3.5~4.5メートル、1日に飲む母乳の量は牛乳に換算すると約200~350リットル、なんとも巨大な赤ちゃんである

 クジラたちがハワイで出会い、子どもをもうけている様子はロマンチックだ。ハワイで出会い、たくさんの食料のあるアラスカに戻ってエネルギーを補充し、出産時期にまたハワイで里帰り出産するのだ。生まれたばかりの赤ちゃんを母乳でしっかりと育て、アラスカまで泳いで戻れる程度まで成長を待ち、またアラスカへ。つまり、ハワイの海を泳ぐのはハネムーンのクジラたちと、お腹の大きな母クジラと付き添う父クジラ、もしくは赤ちゃんが生まれたばかりの幸せいっぱいのクジラ夫婦というわけなのだ。

 マウイの海やクジラの生態、海にいる生き物のことを知るには、マウイ・オーシャン・センターが最適。火山活動によってできあがったハワイの島々は、海のなかの地形が複雑だ。ここでは、その海に住む微生物を顕微鏡で覗いたりでき、手で触って体験して学ぶコーナー、クジラの生態をわかりやすく解説した専門のコーナーもある。ビーチに行ったり、ダイビングをするだけではわからない海のこと、海の生き物のことを学ぶには最高の場所といえる。

マクレガー・ポイントからの眺め。島の南西を見晴らす、マアラエアからラハイナに向かう途中のこのポイントは、クジラを見るには最適。専門家のクジラ観測にも使われる場所で、地元客、観光客の両方が立ち止まるポイント。崖下には灯台もある

 最大の哺乳類であり、その生態も興味深いクジラを少しでも近くで見たい人には、やはりホエール・ウォッチングのツアーに参加するのがおすすめ。ラハイナ、マアラエアの港からマウイ島とラナイ島、カホオラヴェ島の間の内海をいくツアーでは、運がよければ、エンジンをとめた船にクジラがかなり近くまで寄ってくることもある。船ではマイクロフォンを海のなかにいれ、クジラたちの声を聞かせてくれることもある。

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2012.10.23(火)