1980年代から1990年代にかけて流行した「セーターブック(SB)」。

 編み図と共に人気モデルや駆け出しの若手俳優が鮮やかで個性的なセーターを身にまとった写真実用書について、これまで「基本篇」「会社訪問篇」「座談会(前篇後篇)」とお送りしてきました。

 第5回となる今回は、なんと、我らSB愛好会が「キング・オブ・セーターブック」と(勝手に)認定した、俳優の風間トオルさんをゲストにお迎えし、ご自身のSBについてあれやこれや物凄い勢いでお伺いしました。

 「もしお逢いできるなら、風間さんがいい」と、妄想していたことが現実に! これもセーターブックの魔法なのか、奇跡が起きました。なんでも言ってみるものです。

 では、スペシャルSBインタビューをどうぞ。


――セーターブックを撮影されたときのご記憶はありますか?

「もちろんありますよ。懐かしいなぁ。セーターは自分でこういう風にして欲しいと、色とかデザインを指定したのですごく覚えていますね。手袋も“革をここに入れて欲しい”と、細かくリクエストした記憶があります」

――え!? セーターブックのセーター、まるごとリクエストですか?

「セーターはもちろん小物に至るまで、出版社の方にお話しするとニット作家さんがそのセーターを編んでくれる、という流れで」

――その事実、初耳です!(一同驚愕&感動)

「(雄鶏社の)担当の方から“普段、風間さんが着ているようなスタイルのセーターを撮りたいので、自分の好きなデザインで、インナーはこんな風にしたいとか、何のアイテムに合わせるか等、全部書き出してもらえればそれを作ります”と、言われましたね」

――現場に用意されているセーターを着て、はい撮影、ではなく、もっと深く練られていたんですね。ちなみにロケ地などは?

「さすがにロケ場所までは選んでいないですね。(『CITY』を眺めながら)今、考えるとお金がかかっているよね。セーターの本なのに空撮って!」

――ちなみに我々の中で、最初に見たときに衝撃だったのは『風間トオルと仲間たち』なんです……(と、お渡しする)。

「えっ?(笑) どこが衝撃だったんですか?」

――“セーターブックなのにタンクトップ”が現れたり、“セーターブックなのにセーターを着ていない”シーンが多数あったり、オープンしたてのベイシェラトンではしゃぎまくってる感じがすごく華やかで。

「本当だ、全然、セーター着てない(笑)。ちなみに、この“仲間たち”は当時、同じ事務所だった人たちですね(笑)。

 田中ケンは今、快適生活研究家としてキャンプ(アウトドア)の達人になっています。BS日テレで番組(「極上!三ツ星キャンプ」)も持っていて、昨年、ゲスト出演して、何十年かぶりに再会したんですよ」

――リアル“仲間たち”情報ありがとうございます。今回、風間さんにお話を聞きたいな、と思ったのは、風間さんのセーターブックが衝撃的だったからなんです。セーター着て海に入っているとか……。

「これはね、自分から“海に入ってる姿を撮って欲しい”ってお願いしたんですよ。セーターがダメになっちゃうから無理かなぁ、と思いつつ、編集の方に聞いたらOKが出て、撮影の最後に入っちゃいましたね(笑)」

――海に入ったのもご本人のアイデアだったとは!

「ちなみにセーターはリクエストして作ってもらっていましたが、その他に身につけているものは、俺の私物が多いですね」

――「風間さんのもの」っていうクレジットが多数ありました。ちなみにこれらのセーターブックが発売された88年から91年というのはモデルさんから俳優さんになられた時代ですよね?

「モデル時代は“着ているものをどう綺麗に見せるか”という表現をしていたので、役者とは全然違いましたね。役者は“自分をどう見せていくか”ということがメインになったので」

――『MEN'S NON-NO』のモデル時代は阿部寛さんと共に、連載(「寛とトオルのマドンナ・シート」)などもされていましたよね?

「ありましたね! その連載でゲストの浅野ゆう子さんに“役者やりません?”って声をかけられたんです。役者に転身したきっかけとなった企画ですね。確か、ゆう子さん主演のドラマに“出ない?”って」

――まさにトレンディ! 時期的に「ハートに火をつけて!」(1989年フジテレビ系で放送)ですね。

「最初は“役者なんてやったことないし、できないだろう”と、お断りしたんですけど。何度も声をかけていただいたので“そんなに勧めてくれるなら”と始めたのがきっかけですね」

2019.03.20(水)
構成=水野春奈
撮影=平松市聖