1980年代から1990年代にかけて流行した「セーターブック(SB)」。編み図と共に人気モデルや駆け出しの若手俳優が鮮やかで個性的なセーターを身にまとった写真実用書について、2回にわたり「基本篇」「会社訪問篇」とお送りしてきました。

 第3回となる今回は、調子に乗ってラジオ出演までしてしまったSB愛好会の面々がSBを多く出していた出版社の傾向や、斬新な楽しみ方を語り合います。


それぞれの個性が光る
SB三大出版社

ハルナ 著名人のセーターブック(以下、SB)の出版元といえば、その多くを占めているのが「雄鶏社」「日本ヴォーグ社」「ブティック社」の三社。いずれもハンドメイド・手芸書の分野ではおなじみの老舗です。

コイシー 多量のSBと向き合っていると、うっすらとだが各社の特徴が見えてくると思うのだが。まずは我々が訪問した「日本ヴォーグ社」の特徴ね。

オモムロニ。 10万部以上の売上を記録したという、陣内孝則、小堺一機などのSBに共通するんだけど、全体的に雑誌っぽいつくりというか、構成、どれをとっても、なんとなくお洒落だよね。

コイシー デザインセンスがある。安心して見られる。ニヤニヤすることも少ない。

オモムロニ。 担当編集のセンスなのかもしれないけど、今見ても洗練されているし、古くない!

ハルナ ちなみにTwitterでも“私も持っています”という反応が多かったオダギリジョーのSBも日本ヴォーグ社が手がけたもの。びっくりするくらい爽やかなオダギリさんを見ることができる1冊だよね。

オモムロニ。 まさに“ブレイク前夜”のね。

コイシー ちなみに“ニットの貴公子”こと広瀬光治先生も、かつては日本ヴォーグ社で編集者としてSBを作られていた、と。

オモムロニ。 先日、日本ヴォーグ社の皆さんが広瀬先生の思い出を語られていたよね。“バレーボールがお上手だった”ってね。

ハルナ では続いては“ONDORISM(オンドリズム)”で我らを虜にした「雄鶏社」。こちら会社は残念ながら2009年になくなってしまったのだが。

コイシー なんてったって、観音開きのページが自由! 本当に自由度が高い(第1回を参照)

オモムロニ。 人によってはセーター全然着てないページがあったりするし。『風間トオルと仲間たち』なんて、海パン姿で騎馬戦しているし……。

コイシー 第1回でも触れたけど、雄鶏社の自由さは本当にすごくて、編集者さんの“いろんな形の愛”が込められているのが誌面を越えて伝わってくるよね。

オモムロニ。 “あれ? ちょっとこれ、なに? どうかしてる! 買ってよかった”というページに出合えるのは、だいたい雄鶏社のSB。

ハルナ その点においては本当に信頼度高いよね。裏切らない。

オモムロニ。 しかも、実際に編み物をされる方が“雄鶏社さんのSBは本当にわかりやすくて今も困った時に助けてもらうことがある”と言っていた。実用書としても素晴らしい!

コイシー SBの本来の目的はそこだから、とっても大事なこと。

ハルナ 余談になるかもしれぬが、雄鶏社から合計3冊のSBを出している風間トオルは、セーターボーイ歴がとても長い。

コイシー そっか。単独本を出す前にも、モデル時代に何冊か出てるもんね。いわば、“群集から単独”へ。芸能人としてステップアップしている。

ハルナ 先輩のバックで踊っていたジャニーズJr.が、晴れてグループとしてデビューを果たす感じとやや似てるかも。

オモムロニ。 SBを通して、芸能人としてのサクセスストーリーを垣間見られるね。

ハルナ では最後に「ブティック社」のSBの特徴をまとめようか。

コイシー 若手はブティック社を経ていくイメージ。ジュノン・スーパーボーイが多い。

ハルナ 確かに。袴田吉彦、柏原崇、葛山信吾……。みんな若いね。

オモムロニ。 内容はしっかりしているというか、質実剛健。

コイシー “セーターを編むための本”というか、リアル“彼”に似合うようなシンプルなセーターが多いね。

オモムロニ。 掲載されているセーターの点数が多いのも他の2社との大きな違いかも。平とじだし。あと、表紙のカラーが着ているセーターの色としっかりリンクしている。この中山秀ちゃんの表紙を参考にしてみると、セーターも背景色もどっちも茶系とか。

コイシー 芸が細かい! 細部にもこだわりが!

ハルナ ちなみに「レディブティックシリーズ」は現在も出版されていて、電子書籍でも購入できるみたい。SBはないけど。

コイシー 編み物実用書も日々、進化している模様ね。

2019.02.28(木)
構成=水野春奈
撮影=平松市聖