約12万部を売り上げた
伝説のセーターブックとは?

 日本ヴォーグ社が手がけたSBの中で、最も売れたのは誰のSBなのだろうか。

 「ざっくりとした情報でいいのなら」というお言葉と共に、こちらの予想を覆す、それはそれは意外な人の名前が飛び出した。

「正確な数字は申し上げられないのですが、私が関わった作品の中で一番売れたのは、1987年に作った小堺一機くんの『小堺クンのおしゃれ手あみ all that kosakai』ですね。だいたい12万部。さらに追加して刷ったと記憶しています。今考えるとすごい部数ですよね。小堺くんは撮影時、ポーズでも何でも、とてもたくさんアイデアを出してくれました。“楽しげな誌面にしましょう!”と、とても協力的な方で、楽しい撮影だった記憶が今でも残っています」

 数多の俳優やモデルを差し置いてのナンバーワン。そしてその売上部数に、我々SB愛好会の3人は驚きを隠せず。

 すでに「ライオンのいただきます」(フジテレビ)の司会で“お昼の顔”としてお茶の間の人気者だったとはいえ、やはり驚異的な数字だ。

日本ヴォーグ社が手がけた
セーターブック(の一部)をご紹介

時代の流れと共に消えた
有名人のセーターブック

 ”小堺クン”のSBが10万部以上の売上を記録した時代を経て、かつては大量に出版されていた著名人が登場するSBは、時代の流れと共にパッタリと見ることがなくなり、現在ではほぼ全滅。

 SB愛好者たちの胸の中で長年の間、疼いていた「どうしてSBは無くなってしまったのだろう?」という疑問についても、デリケートな内容ではあるが訊ねてみた。

「今でも手編みの実用書は出版されているんですよ。ただ、やはり暖房器具や温暖化(暖冬)の影響を受けて、手編みのセーターを着る人が減ったこと。それと既製品のニットの品質が向上し、手編みではなくても、わりと手ごろなお値段でニット製品を購入できるようになったことの影響も大いにありますね」

 なるほど、納得。暖冬の影響というのが実にリアル。手間もお金もかかる手編みのニットから、品質が向上した既製品のニット主体へ世の中の主流が変わっていった。時代は常に動いているのだ。

 また、日本ヴォーグ社と同時期に、個性溢れるアイデアに富んだ(これを我らは勝手に「ONDORISM」と呼んでいる)SBをたくさん世に出していた、手芸実用書の老舗、雄鶏社の倒産(2009年)については……。

「衝撃的でしたね。同じように手芸書を手がけていたライバル会社でしたが、それと同時に“盟友”という気持ちがあったので、まさかあのようになってしまうとは思ってもみませんでした」

 同じようにSBを手がけていた雄鶏社を「盟友」と呼ぶ今さんを見て、思わず胸がジーンとしてしまった。ライバルであり盟友……、素敵だ。セーター(毛糸)によって結ばれていた縁ではなかろうか。

佐藤健、菅田将……
我らの夢はまだまだ膨らむ

 最後に「もし仮に、2019年現在に活躍する著名人でセーターブックを制作するなら誰がよいか?」という質問を。

 すると、俳優の佐藤健の名前が。似合う! なんでも着こなせそう! 確かにセーター感がある! そして確実に売れそうな匂いも……。

 ちなみに「“もしも2019年にSBを作るなら誰に着せたい”問題」については次回以降にがっつり触れる予定である。脳内にて想像に想像を重ねてお待ちいただきたい。

 また、その話の延長で、80年代後半から90年代前半にビートたけしが愛用していた、ドン小西(当時は小西良幸)が手がけていたブランド「ficce(フィッチェ)」の話題にも至る。

 アバンギャルドで個性的なFicceのニット(※通称「たけしニット」)、最近では俳優の菅田将暉がたけしニットっぽいものを着こなし、一部では話題になった(インスタグラムには「#たけしニット」のハッシュタグも出現)。

 しっかりSBについて学んだ我らは、最後に社内見学までさせて頂き(本当に素敵な社屋でした!)、充実の会社訪問を終えたのであった。

 日本ヴォーグ社の皆さま、本当にありがとうございました。

 第3回は急遽、SB座談会を開催。「これぞ! 我らのSBの楽しみ方」をお届け予定。お楽しみに。

●SB話、一緒に盛り上がりましょう!

Twitter、Instagramなどで、ハッシュタグ 「#セーターブック会議」をつけて、SBについて自由につぶやいてください。
SNS上でまとめたり、次回以降の記事で参考にさせていただきます。


今なら誰のSBが欲しい?アンケート

2019年の今、SBを作るなら誰に、どんなセーターを着せたい?
SNSをやってない方、SNSに書き込みづらい(けど熱い思いがある!)方は、ぜひ下記URLのアンケートフォームにて教えてください!
締切は2019年3月4日(月)18:00です。

https://goo.gl/forms/WEKYvomeKIcMrUjT2

 

ハルナ(執筆と分類担当)

mixi「平成のセーターブック」コミュニティ管理人。SB連載では執筆とデータベース作成を担当。ちなみに今、最もセーターを着せたいのは休日課長(ゲスの極み乙女。)。課長のセーター姿は日本一。本業は寺社仏閣広告の編集やテレビ番組関連記事のライター業務など。


コイシー(交渉担当)

面白そうなことには乗っかる気質から、ハルナが作った、mixi「平成のセーターブック」コミュニティの副管理人に。SB連載では外部との折衝など事務方を担当。本業は食のライター。セーターを着せたいのは、実は手脚が長くてプロポーション抜群の荒川良々。


オモムロニ。(収集担当)

のめり込むと身銭を切らずにはいられないタイプで、本特集に掲載のSB殆どを所有。本業は雑貨コーディネーター。雑誌CREAでギフトコラムを連載中のほか、2019年1月に『DAILY GIFT BOOK 気持ちが伝わる贈りものアイデア』を刊行。プロ野球選手にチームカラーのセーターを着せたい。