撮影前も撮影中も
ディスカッションをした

――スヨンさんとの共演はいかがでしたか? インタビューをしてとてもクレバーな方だな、という印象を受けましたが。

 本当にそうなんですよ! 作品と真摯に向き合って、妥協を許さない。撮影前も撮影中も、とにかくめちゃくちゃディスカッションをしたんですよ。「私はこう思うんだけど、どう思う? 意見を聞かせて」と。全部行動に移すので、純粋にカッコいい方だなと思いましたね。

 国は違えど、同じ役者として、同じ空間で同じ空気を吸ってお芝居をすることは、本当に良い経験でした。スヨンさんから学ばせてもらうことが多い現場でした。

――韓国のキャスト、スタッフとのお仕事は、日本とは違いがありましたか?

 スヨンさんはじめ、韓国の俳優さんは自分の意見をはっきり言う方が多いな、という印象がありました。妥協しないで意見を言う。それは監督も、スタッフもそうでした。

 日本人はどうしても空気を読んだりしがちじゃないですか? もちろんそういうのが大事なときもありますが、まず「私はこう思うんです」って最初に言うのは大事だな、自分もなるべくそうしよう、と思いました。

 友人役のドン・ヒョンベさんもとても可愛がってくれて、釜山国際映画祭のときにお酒を一緒に飲んだんです。僕は韓国語はあまりしゃべれないし、ヒョンベさんも日本語が得意ではないんですが、目やボディランゲージで一生懸命コミュニケーションを取りあって。お互い片言ですが、心が通じあえる、温かい瞬間がありました。

――吉本ばななさんも、撮影現場に来られたそうですね。

 いやあ、まさか名古屋にまで来てくださるとは思いませんでした。舞台になるエンドポイントというカフェまで来てくださり、「素敵なカフェですね」と言ってくださったし、ユミと西山の雰囲気もいいですね、とおっしゃってくださったので、ホッとしました。

――CREA WEBの読者へ、メッセージをお願いします。

 誰にでも心に傷を抱えてしまうことがやってくるかもしれないけれど、それを助けてくれる出会いというのは、ふとしたときに現れる。そういう出会いを信じて、僕自身も一生懸命生きていくから、皆さんもこの映画からそういうエネルギーを感じて、生きていってください! 重くなっちゃいましたね(笑)。そんな重い映画じゃないんですけど、そんなメッセージを感じてもらえたら嬉しいです。

田中俊介

1990年愛知県生まれ。
東海エリア出身・在住のメンバーで構成された10人組ユニットで、先日1月14日にナゴヤドーム単独ライブを成功させたエンターテイメント集団「BOYS AND MEN」のメンバー。映画やテレビドラマなど、俳優としての活動にも力を注いでいる。365日必ず映画を1日1本見るほど、映画に対しての愛情が深い。
主な映画出演作に『ダブルミンツ』 (内田英治監督)、『HiGH&LOW THE MOVIE 2 / END OF SKY』 (久保茂昭監督・中茎強監督)、『HiGH&LOW THE MOVIE 3 / FINAL MISSION』 (久保茂昭監督・中茎強監督)、『ゼニガタ』(綾部真弥監督)、『シェアハウス』(内田英治監督)、『恋のクレイジーロード』(白石晃士監督)、『スウィート・ビター・キャンディ』(中村祐太郎監督/2019年完成予定)などがある。

映画『デッドエンドの思い出』

メガホンを取ったのは、本作が長編デビューとなるチェ・ヒョンヨン監督。学生時代、日本文学と映画学を韓国でダブル専攻。名古屋での撮影は円頓寺商店街を舞台にした短編映画「お箸の行進曲」に続いて2度目となる。
主人公のユミは、遠距離恋愛中の婚約者を追いかけて、韓国から名古屋へやってくる。彼の裏切りに絶望し、あてもなく名古屋の街をさまようユミが行きついたのは、古民家を改造したカフェ&ゲストハウス「エンドポイント」。そこで出会ったオーナーの西山くんは不思議な存在感の持ち主。
西山くんのさりげない心遣いや、カフェに集うちょっぴりおせっかいな常連客たちは、いつしかユミを癒し、ゆっくりと立ち直らせてくれるのだった……。

監督・脚本 チェ・ヒョンヨン
出演 スヨン(少女時代)、田中俊介(BOYS AND MEN) 他
原作 よしもとばなな『デッドエンドの思い出』(文春文庫刊)
製作 ZOA FILMS シネマスコーレ
配給 アーク・フィルムズ/シネマスコーレ
●2019年2月16日(土)新宿武蔵野館ほか全国順次公開
2月2日(土)シネマスコーレにて、名古屋先行公開
http://dead-end-movie.com/
©2018「Memories of a Dead End」FILM Partners

スヨン&田中俊介が語る
『デッドエンドの思い出』

2019.01.27(日)
構成=石津文子
撮影=佐藤 亘