バルセロナに誕生した
文化財ホテル

最高級のリラックスを味わえるホテル

左：建物の雰囲気とは対照的に、モダンなデザインのバスルーム
右：アメニティはロエベで統一

 がっしりした石造りのエントランスは中世の時代のもの。そこから分厚い木の扉を抜けてホテル内に歩を進めれば、そこは旧市街特有の日陰がちの街路とは対照的に、明るい日差しの差し込む中庭に面したロビーとなっている。この中庭をひと眺めしただけでも、この建物が生きてきた年月を物語るように、さまざまな時代のアーチやバルコニー、大窓などが無理なく新しいホテルのなかに組み込まれているのがよく分かる。またホテル内のライブラリースペースは、まさに前述の物見の塔、第28塔と29塔をつなぐ通路にあたっていた場所を利用している。ここで読書をしながら、はるか昔にその通路を行き来した歩哨たちに思いを馳せるのも一興だ。さらにレストラン「メルセリーノ」のプライベートダイニングでは、ローマ時代の城壁と、改修中に発見された13世紀のフレスコ画に囲まれて食事を楽しむことができる。

屋上テラスではカクテルなどを楽しめる。20時以降は宿泊客以外も利用可能

 客室数はわずか28。オリジナルの木の梁と高い天井をそのまま生かし、実にゆったりした空間となっている。特にグラン・スイートは広さ150平方メートル以上、ゴシック式の回廊部分を生かした窓辺から下の街路を見下ろせば、数百年前の貴族の気分を味わえるかもしれない。

 9月7日にオープンしたばかりのこのホテル、早速宿泊したゲストからは、建物の文化財的価値はもちろんのこと、「旧市街の真ん中にありながら、静かでゆったりと最高級のリラックスができる」と大好評。早くもバルセロナを代表するホテルのひとつになりつつあるようだ。

text:Miyuki Tsubota