食材生産者と星付きシェフは
大の仲良し!

 シェフにとって、料理を作るための食材は何よりも大切なもの。どのシェフも上質の食材を手に入れるために奔走している。

 ここ、ビュルゲンシュトックでは、スイスの食卓に欠かせないチーズが、ホテルのすぐ目の前で造られている。その生産者の工房を訪ねた。

 案内役を買って出てくださったのは、「ビュルゲンシュトック ホテルズ&リゾート」全体を統括するシェフ、マイク・ウェールレ氏。

 数々のミシュランの星付きレストランで活躍してきたベテランシェフで、2018年12月までスイス インターナショナル エアラインズのファーストクラス、ビジネスクラスの機内食を監修している。

 1軒目のチーズ工房は、ホテルの目の前の草原にあるヨーセフさんの工房。車で坂道を降りていくと、ホテルの窓を開けると聞こえるカウベルの主たちがゆっくりと草を食んでいる。

 「食材の生産地がホテルから近くて、すべてがオーガニックで造られている。最高の環境だ」とマーク氏。

 小さな工房内では、ヨーセフさんご夫妻がチーズやバターを造っていた。生乳を撹拌するための機械など、様々な機械がところ狭しと並び、温めた牛乳2トンが入る銅のボウルはピカピカに磨き上げられていた。

 熟成庫には、チーズを毎日洗うための海水が張られ、ひとつひとつの仕事が丁寧に行われていることがよくわかる。

 ひと通りチーズ造りの工程を説明してもらった後は、いよいよ試食。ひとくちサイズに小さく刻んだ4種類のチーズを用意してくれていた。

 これが美味しいのなんのって! 味が濃くて旨みがしっかりしている。パンや白ワインも用意されていたものの、同行していた全員がチーズばかりに手を伸ばして止まらなかった。

 次に向かったのはシュタンスの街中にあるチーズ工房。チーズを造り続けて42年というセットさんは、年間約80トンものチーズを造っているという。

 ここでは、カマンベールチーズやヨーグルトもあった。さっそくカマンベールを試食させてもらうことに。コクがあって香りもいい。

 「ヤギのチーズは造ってないの?」と聞くと、すぐにヤギのカマンベールを試食させてくれた。ひときわ香りが強くやや酸味がある強烈な味。チーズ好きにはたまらない味だ。

 これらのチーズは、「ビュルゲンシュトック ホテルズ&リゾート」内のレストランだけでなく、スイス インターナショナル エアラインズの機内食にも使われている。実は、往路のビジネスクラスの機内でチーズの美味しさに驚いた。その生産の現場を見ることができて感動したのだった。

 ビュルゲンシュトックに戻ると、次にマーク氏が案内してくれたのはビニールハウス。

 中に入って出てくると手の中に赤いものが。ラズベリーだ! オーガニックで栽培されている。隣のハウスにはイチゴがあった。

 そして、この日のランチはもちろんチーズが主役。砕いたラクレットチーズをフライパンで溶かしてパンの上に載せるというもの。試食したときのチーズとはまったくちがう食感と香り、またもおかわりが止まらなくなったのだった(笑)。

2018.12.04(火)
文・写真=たかせ藍沙