フィラエの神殿は見どころいっぱい

 ボートで約20分、フィラエの神殿に到着。

 小さな島に築かれているのは、古代エジプト最後の王朝プトレマイオス朝からローマ時代にわたって建造された神殿。

 古代エジプトで信仰された来世の神オシリスの妻、イシス女神が祀られ、ふたりの子供であるホルス神が生まれた場所とされている。550年頃にローマ皇帝によって閉鎖されるまで、古代エジプトの信仰を支えた最後の神殿だ。

 上陸していきなり現れる「ネクタネボ1世のキオスク」は、太い石柱が連なる広場。この柱の中には、隠れキャラのようにハトホル女神の頭が乗ったものも交じっている。

 「イシス神殿」の第1塔門には、プトレマイオス1世が、イシス女神、ホルス神、ハトホル女神に生贄を捧げている巨大なレリーフが描かれている。

 神殿は第2塔門、列柱室、至聖所と続くが、どれも壁や柱には繊細なレリーフがびっしりと描かれ、比較的新しい神殿ゆえ、保存状態が良好なことに目を見張る。

 一番奥まった至聖所では、本来はハヤブサの頭であるホルス神が人間の赤ちゃんの姿でイシス女神のお乳を飲んでいるレリーフも見どころだ。

 島の東側、船着き場へ戻る途上にある「トラヤヌス帝のキオスク」は、花をモチーフにした柱が印象的。紀元前100年頃にトラヤヌス帝の命で建てられたもので、船着き場に戻ったイシス女神の休息所(キオスク)だとされる。

 実はこのフィラエの神殿、かつては“ナイルの真珠”と称された、緑が美しいフィラエ島にあった。

 ダム建築により半浸水した状態に陥り、さらにアブシンベル神殿同様、アスワンハイダム建築計画で水没の危機にさらされることに。

 ユネスコによって現在の島に移されたが、なんと元の島をフィラエ島と同じ形に作り変えたというから驚きだ。この神殿も世界遺産に登録されている。

2018.11.15(木)
文・撮影=古関千恵子