中世へタイムスリップ

「時を越えて旅ができたら!」そんな夢を描いた人は少なくないと思います。今も中世の町並みをそのままに残す美しい「シエナ」は、まるで中世にタイムスリップしたような感覚になる町です。

 シエナはイタリアの中央部、フィレンツェからバスで1時間程のところにあり、古い町並みの旧市街地は世界遺産にも登録されています。その歴史は古く、6世紀半ばから、ローマとフランス方面を結ぶ街道の中間都市として栄えてきました。主に金融業、羊毛取引業を中心に発展し、フィレンツェと並ぶ有力な都市国家として栄華を誇りました。

左:イタリアンゴシックの美しいファサードを持つドゥオーモ
右:丘に沿ってつづら折りに続く煉瓦色の町並みを散歩していると、ふと中世にタイムスリップしたような気分に

 豊かだった当時の面影は整備された町の随所に見ることができます。イタリアンゴシックの豪華な様式で造られた大聖堂「ドゥオーモ」は必見の美しさ。また文化、芸術にも厚く、13世紀終わりからシエナを中心に活動した芸術家たちは「シエナ派」と称され、ルネッサンス絵画史に重要な軌跡を記しています。

左:町のシンボル「マンジャの塔」と市庁舎
右:カンポ広場でくつろぐ人々

 町のシンボルは空に高く伸びた「マンジャの塔」。その前には、イタリアで最も美しい広場といわれるカンポ広場があります。大きな貝殻のように開いた広場はその造形も美しいのですが、それだけではありません。貝殻の中心に向かって雨水を集める仕組みになっていたというから、シエナがどれだけ素晴らしく理知的な都市だったかということが窺えます。今もたくさんの人が座り、くつろいでいる広場。もし時間があったなら、皆に混じってぜひ座ってみて下さい。そこから見上げる、広場をぐるっと囲む中世の建物、その向こうにぽっかりと広がるトスカーナの濃い青空はガイドブックに載らない、見た人だけが知る美しさです。

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