■星野リゾート 界 松本 (前篇)

 国内のみならず海外に至るまで、さまざまなロケーションに魅力的な施設を展開する星野リゾート。その星野リゾートが、今、特に力を入れているのが「ウェルネスな旅」です。

 この連載では、バラエティに富んだアクティビティ、そしてオーガニックな食事などが楽しめる、ヘルスコンシャスなステイを各地からご紹介します。


建築美も存分に楽しめる
和モダンの温泉旅館

 江戸時代に松本城主の湯殿が置かれていたという由緒正しき湯処、浅間温泉。当時、一帯には城主や武士の別邸が並び、「松本の奥座敷」として知られていた。時を経た今も、効能あらたかな名湯が、温泉好きを魅了する。

 往時をしのばせる温泉街のなかで、存在感を放っているのが「星野リゾート 界 松本」。一見すると旅館とは思えないモダンな建物のなかには、ゆったりとした現代版湯治の時間が流れている。

 エントランスから、白檀の香りが心地よく漂う小道のような廊下を歩いて館内へ。そこでは、教会のように天井が高い開放的なロビーに迎えられる。モダンと和が絶妙に融合するこの独特な空間も、この宿に泊まる醍醐味のひとつ。

 信州産の濃厚なぶどうジュースで喉を潤し、まずはロビーでほっと一息。ここでの楽しみは温泉だけにあらず。音楽にワインに食と、バカンス気分もしっかり味わわせてくれる。

 毎晩行われるロビーコンサートや、独自のプログラム「入浴指南」についての説明を受ければ、ますます滞在への期待が高まってくる。

 客室は26室のうち、15室が専用露天風呂付き。なかでも、リピーターの人気を集めているのが1日1組限定の「オーディオクラフトルーム」だ。

 室内には木製のスピーカーや楽器をイメージしたオブジェなど、民芸の街として知られる松本らしい仕掛けが。さっそく用意されていたCDをかけてみると……、温かな音のシャワーが降り注いで、まるでホールで生演奏を聴いているかのよう!

 庭の緑を眺める露天風呂と、湯上がりにのんびりとできるテラスもあるから、何時間でもこの部屋にこもっていたくなる。

 このユニークかつ贅沢な部屋は、地域の特長的な文化を楽しむため、全国の「界」に用意されている、居心地のよさとその土地の個性を追求した「ご当地部屋」のひとつ。ここに泊まれば、五感も研ぎ澄まされそうだ。

2018.10.27(土)
文=芹澤和美
撮影=佐藤 亘