鮎のおいしさを教えてくれた
珠玉の焼きテクニック

 ひとり用の土鍋ごと火にかけたものが振舞われる。あっつあつのこれは一体?

 「フカヒレとスッポンのお鍋でございます」。おおっ、さきほどのスッポンはここへつながっていくのか。中華の白湯と鰹出汁を合わせたスープに、気仙沼の最高級のフカヒレ。

 夢中になりすぎて、次の箸休めを撮り忘れる大失態。玉蒟蒻のアヒージョが出てきた。山形から取り寄せたものをスルメイカと一緒に2日間炊き、ニンニクやアンチョビの効いたオイルに漬けたもの。これは白ワインにも合うなあ。

 ちなみに、1万3,000円のコースだと、フカヒレスッポン鍋の代わりに鶏のモツ煮が登場する。山梨の郷土料理のひとつで、あのB級グルメグランプリで優勝したメニュー。というのも 店主は山梨出身。大切なふるさとを織り込んだ品は、しみじみとうまい。

 そして、この日の真骨頂が登場。

 「クリスピー鮎でございます」。店が開店する前から焼き始めるのだという。3時間以上直火で焼き上げ、鮎自身のもつ脂で中までクリスピーに仕上げる。

 実はわたくし、鮎が苦手である。今までそれなりにいただいてきたが、毎回「やっと食べ切りました」と心の中で泣いていた。しかしここの鮎は違っていた。長時間火にかけていたにもかかわらずパサパサになることなく見事にしっとり。美しいフィニッシュを遂げているのだ。

 締めは土鍋で炊いたごはん。

 福井の「いちほまれ」は、“コシヒカリ発祥の地”福井県がおよそ6年の歳月と技術の粋を込め開発した銘柄米だ。

 甘味は、山梨の伯父から送られてきたという桃。これまたうまい。聞けば、品評会で高い評価を受けた桃だという。

 「桃の季節が終わったらどうしますの?」と聞くと、「あんみつとか、考えています」と朗らかな答えが返ってきた。寒天となる天草にも並々ならぬ興味があり、積極的に使っていきたいのだそう。あんみつ、ところてんが大好きな私としては、黙っていられない。

 ハッ、いつまでも思い出に浸っている場合ではないじゃないか!  この原稿を書きあげたらすぐに予約の電話を入れなくては。

御料理 ほりうち(おりょうりほりうち)

所在地 東京都新宿区荒木町9-15 土田ビル1階
電話番号 03-3226-2337
営業時間 16:00~23:00
定休日 日曜・祝日
予算 1万5000円~
[2018年7月訪問]

Keiko Spice(けいこ すぱいす)

東京都生まれ。得意なディスティネーションはハワイと香港。普段は3日に1回のペースで焼肉を中心とした食生活。別名「肉の妖精」。

Column

新店来訪! 美味しい出合いに一番乗り

ニューオープン、シェフやメニューが変わった店、面白い企画を立ち上げた店……などなど、なにかと「新しい」店を一番乗りで紹介するページ。「美味しい出合い」にご注目ください!

2018.10.06(土)
文・撮影=Keiko Spice