2時間ドラマを研究する意義とは

速水 西村京太郎先生には、ぜひリニアモーターカーを舞台に2時間ドラマの原作になる小説を書いていただきたいですね。

大野 それですよね。最新技術のリニアモーターカーで移動することによってなし得る犯罪というのはあるはずです。

速水 2時間ドラマは、戦後の観光とか交通などの発展を、ある種の記録としてとどめている文化じゃないですか。となると次世代の乗り物の登場を描くことはジャンル的な義務ですよ。

大野 2時間ドラマは、高度経済成長後の日本社会の都市と地方の関係とか、様々なものを無意識に切り取ったメディアでもあるんですよね。

速水 あまりにも膨大で、かつ大衆文化過ぎて、これまで誰も研究材料として捉えることのなかった分野じゃないですか。大野さん、本当にいいところに目をつけたと思います。

大野 誰もやらなかったんです。あと、たまたま大量の資料が廃棄されそうなところを引き受けることになった経緯があって。確かにおっしゃるとおり、これほどおもしろいテーマもないんですけど、とにかく掘り起こすために必要な資料が膨大にあったので……。

速水 本当にたいへんだったと思います。映像や紙の資料だけでなく、オーラルヒストリーとして関係者の話を集めたのも並大抵の労力じゃないですよね。

大野 最初は皆さんインタビューに応じられないって断ってくるケースが多かったんです。黎明期に活躍されていた皆さん、結構なお年になっていて、中には入院されていたり、あまりうまく話せなくなっていたりというのもあって。すでに他界されている方もいますし。

速水 けど、形にしておかなければ残らない歴史でもありますよね。

大野 そうなんです。テレビ局で偉くなるのは、主流の報道局とか編成局とかの人たちなので、2時間ドラマに人生を捧げた方たちって、会社からは冷遇されているんですよ。なので話を聞かせてくださいってお願いしても「エッ、2時間ドラマの話を聞きたいの? 連続ドラマの間違いだろ?」って。

速水 2時間ドラマって、下に見られてしまっているんですね。大衆的な文化故に、下に見られてしまうっていうことですか。

大野 そう、「俺たちはB級だからさ」って自虐的におっしゃるんです。でもおじいちゃんたち、のちに「いろいろ取材してくれてありがとう」とか「あの時ちょっと言いすぎちゃって、そのまま本になっちゃったけど大丈夫? 後輩に迷惑かけないか?」って手紙をくれたり電話をくれたりするんですよ。そういう手紙、宝物として大事にとっておいてますけど。

速水 初めて取材されるからうれしいんでしょうね。いい話を聞かせてもらいました。2時間ドラマという分野の研究が、これを機にもっと深まるといいですよね。

『2時間ドラマ 40年の軌跡』

著・大野 茂
発行 東京ニュース通信社
発売 徳間書店
1,500円+税

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大野 茂(おおの しげる)

阪南大学教授(メディア・広告・キャラクター)。1965年東京生まれ。慶応義塾大学卒。電通のラジオ・テレビ部門、スペースシャワーTV/スカパー! 出向、NHKディレクターを経て現職。著書に『サンデーとマガジン』(光文社新書)がある。

速水健朗(はやみず・けんろう)

ライター・評論家。1973年金沢市生まれ。TOKYO FM「速水健朗のクロノス・フライデー」などに出演中。近著に『東京どこに住む? 住所格差と人生格差』(朝日新書)、『東京β:更新され続ける都市の物語』(筑摩書房)など。