テレビ番組に対する規制もさることながら、リョウコは漫画にも厳しかった。かつて自分が接する事のなかった娯楽や面白さを認定できなかった作品は、自分の子供たちにはアプローチさせない。学生時代に本の虫だったリョウコは漫画を殆ど読んだ事がなく、むしろ彼女がリスペクトしていた憧れの大学生のお兄さんから「漫画よりもトルストイを」と洗脳され続けたこともあり、「サザエさん」や「世界名作劇場」、「ジャングル大帝」などのテレビアニメは許されても、紙に印刷された漫画は子供の教育にとって絶対的なタブーだった。

 だから私も小さい時から本だけは山のように買ってもらい、野山にいなければ図書館というくらい本好きな子供になった。が、高尚な文化のバリケードは、学校という社会環境の中では効力を発揮しない。私が最初に衝撃を受けた二次元漫画は『週刊マーガレット』に連載していた土田よしこさんの「つる姫じゃ~っ!」だった。大好きなアニメ「トムとジェリー」やテックス・アヴェリーの不条理系ギャグに相通じるものがあり、それを二次元で楽しむ醍醐味を「つる姫じゃ~っ!」で知った私に、もう歯止めは利かなかった。

 小学校に入学して仲良くなったゆうこちゃんには4人も年上のお兄さんがいて、彼女の家は少年漫画のパラダイスだった。手塚治虫、藤子不二雄、赤塚不二夫、つのだじろうに楳図かずお、何を読んでも面白かった私は、留守番用のおかず代を削って週刊漫画誌を買って読み耽り、ついには単行本にまで手を伸ばすようになった。しかし、こっそり買いそろえた漫画本はやがてリョウコに見つかり処分された。特にショックだったのは『まことちゃん』全巻の処分で、あの時の怨嗟と悔しさが潜在意識に滞っていて、私は漫画家になる道を選んだのではないかと思う事もある。

 ちなみにリョウコの中で初めて市民権を獲得できた漫画は『テルマエ・ロマエ』である。彼女に漫画の面白さが伝わるまでの、なんと長き道のりだったことか……。


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