問答無用の「弱者」への変身が
優しさのあり方を教えてくれる

 「朝起きたら 赤ん坊になっていたのだ」。株式会社モアイの営業部、47歳の頼れる武田本部長が、推定生後8カ月の赤ちゃんに変身してしまう。昼寝は長いし排泄を我慢することはできないけれど、頭脳はおっさんのまま。しゃべりも問題なくいける。ならば、と本人も周囲の人たちもあっという間に状況を受け入れて、どうやったら今後も滞りなく一緒に仕事ができるか、建設的な(それゆえに笑える)試行錯誤を繰り返す。赤ちゃん本部長は社長に言う、「身体に多少ムリをしてでも仕事をするつもりです」。それに対し社長は、「身体を酷使して良い結果など出ん!!」。

 社内に現れた問答無用の「弱者」をどう受け入れるか、その対応の中には、ブラック企業化する日本社会の風通しを良くするヒントが隠されている。LGBTの問題を、差別としてでもなければ驚きとしてでもなく、当たり前のものとして受け入れる、社内のみんなの営みにも心揺らされました。

  『赤ちゃん本部長』 (既刊1巻)

 ある日突然、赤ちゃんに変身してしまった武田本部長(47)。赤ちゃんゆえの本能の欲求に悪戦苦闘しながらも、赤ちゃんゆえのかわいさを武器に営業攻勢もかける。抱っこひもや哺乳瓶を片手に、本部長をサポートする部下たちの優しさにもほっこり。WEBサイト『ベビモフ』連載中。
竹内佐千子 講談社 700円

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2018.08.19(日)
文=吉田大助

CREA 2018年8・9月合併号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

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