プチプラさえ最先端
下克上も資生堂の仕業

 さらにプチプラにしてナチュラルな素材を巧みに肌に届けるレシピストは、オンラインで購入できる手軽さから、高級品愛用者でも、ちょっぴり魅力に感じてしまう。そういうブランドがもう覚え切れないほど目白押しなのだ。

 こうした展開ばかりじゃない。看板ブランドの最先端ぶりも、ますます快調。例えば、ベスコス総なめとなったクレ・ド・ポー ボーテのセラムラフェルミサンSは、まさに現在進行形の美容医療、サーマクールなどに、真正面から挑んでいくような先進のアプローチ。翌朝の肌のハリ弾力に目を見張るような、明快な即効性が何とも頼もしい。さらにまたHAKUも今年、「シミの原因に毛細血管の増加が関係していた」という、まさに美白史に残るような歴史的発見を成し遂げ、これにもしっかりと対応するような製品を早くも用意し、大きな注目を浴びている。

 よくもまぁ、シミと血管の関係など突き止められたもの。これは本当に驚きの発見だった。そもそも資生堂は、皮膚科学の研究成果やコスメテクノロジーを競う世界的な化粧品オリンピックで、最も多くの金メダルを取っているメーカーのひとつ。日本でだけじゃない、世界的にもズバ抜けた研究開発力を誇っているのだ。やっぱり資生堂! さすが資生堂! 黙々と基礎研究を続け、化粧品サイエンスを進化させてきた功績はあまりにも大きく、日本品質のゆるぎない信頼にもつながっていて、資生堂の存在そのものが日本の誇り、となっている。

 そうした様々な技術が、インテグレートのような1,000円台のプチプラコスメにも見事に行き渡っていて、水ジェリークラッシュのロングラスティングファンデーションや、クリームがパウダーに変わるカラーコスメなど、一歩先行く質感が1,000円札1枚で手に入ったりする喜びを私たちに提供してくれる。今や、プチプラが高級コスメに負けないくらいの品質を備えていたりして、さながら下克上の様相を呈していたりもするけれど、そういう時代を作ってくれたのも有り難い。

 それも今、化粧品テクノロジーの進化がめざましく、基礎研究の差がそのまま露呈する時代だからこそ、真の実力者だけが力を見せつけられるようになったのだ。本当の力の差を見せつける時代がいよいよやってきたということ。かくして何から何まで改めて、資生堂の偉大さを思い知る今日この頃なのである。

齋藤 薫 (さいとう かおる)

女性誌編集者を経て美容ジャーナリスト/エッセイストに。女性誌において多数のエッセイ連載を持つほか、美容記事の企画、化粧品の開発・アドバイザーなど幅広く活躍。『“一生美人”力』(朝日新聞出版)、『なぜ、A型がいちばん美人なのか?』(マガジンハウス)など、著書多数。近著に『されど“男”は愛おしい』(講談社)がある。

Column

齋藤 薫 “風の時代”の美容学

美容記事の企画、化粧品の開発・アドバイザーなど幅広く活躍する、美容ジャーナリスト・齋藤薫が「今月注目する“アイテム”と“ブランド”」。

2018.08.25(土)
文=齋藤 薫
撮影=釜谷洋史

CREA 2018年8・9月合併号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

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