役作りで、苦手なゾンビ映画を10本ノック!

――一方、『千と千尋の神隠し』や『借りぐらしのアリエッティ』といったスタジオジブリ作品を始め、『サマーウォーズ』など、声の出演作でも高く評価されていますよね。

 評価していただけることは、純粋にうれしいことで、本当に有難いことなんですが、おこがましいな、申し訳ないな、という気持ちでいっぱいなんです。なぜなら、僕は俳優であって、声優さんではないですから。

――さて、主演最新作『桐島、部活やめるってよ』ですが、神木さんが映画部の前田を演じるにあたって、吉田大八監督からDVDを見るよう勧められたそうですね?

 前田はゾンビ映画が好きな設定なので、監督からゾンビ映画のリストを渡されたんです。僕はホラーが苦手なので、怖くない順から10作品ほど(笑)。これが役作りの中でいちばん大変だったかもしれません。そのなかでも、映画の中にもセリフが出てくるジョージ・A・ロメロ監督の『ダイアリー・オブ・ザ・デッド』はドキュメンタリー・タッチなので、衝撃的でしたね。映画のなかで、顧問の先生から「君たちにゾンビって近い存在なの?」と聞かれるぐらいゾンビって現実的なものではないと思うんですが、それを払拭するぐらいリアルな設定だったので、とてつもなく怖かったです。

――撮影当時はまだ現役高校生だった神木さんですが、高校生役を演じることでの役作りは? またメガネ男子として役作りみたいなものはあったんでしょうか?

 この役を演じたのは高校3年生の後半だったのですが、特に自分が高校生だからという意識はなかったですね。全力で前田になりきる一心でお芝居をしていました。ただ、役作りでかけていたメガネがすぐズレて、縁で視界が邪魔されていたんです。だから、撮影の最初の方では、何回もメガネを上げる仕草をしていたのですが、監督から回数を減らすよう言われました。「メガネを上げる動作はアクセントになるので、いざというシーンのときに上げてほしい」って(笑)。

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2012.08.03(金)
text:Hibiki Kurei
photographs:Naoya Sanuki