カリブで島をめぐるという悦び

 “アイランド・ホッピング”という旅のスタイルがある。目的と好みにあわせて島から島へと移動を続け、時には小型ボートやセスナ機を複雑に乗り継ぎ、楽園を次々と制覇していく――。

 単に島をめぐるだけではない。ひとつの島では徹底してひとつの楽しみ方にこだわり、その魅力を味わい尽くすのがこの旅の醍醐味。訪れる先々で自分だけの空間と時間を手に入れる。自らのスタイルに貪欲な旅人が自らの手で贅沢をたぐり寄せる、究極の旅の方法と言える。

 カリブ海とは、まさにこうした“アイランド・ホッピング”の理想の地。メキシコ湾と大西洋にはさまれた温暖な海域には、7000を超える群島や岩礁が点在する。遠浅の海に宝石のように散らばる島々は、眩い陽の光を浴びて輝きを放っている。

 そもそもカリブが歴史の舞台に登場するのは、コロンブスが新世界を発見した大航海時代のこと。その後、植民地の時代を経て、500年の荒波を乗り越えてきた島々は、独自の風土と文化を育んできた。現在、大半の地域は独立を果たしたが、今なおそうした歴史の面影が街並みや暮らしのなかに色濃く残る。

 日本から行くにはちょっと勇気がいるが、旅人が夢見る至福のすべてがここにあることだけは間違いない。

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photographs & text:Katsuyoshi Tanaka