伊坂幸太郎の中編小説を、本作が伊坂と4作目のタッグとなる中村義洋監督が映画化した心温まるヒューマン・ストーリー『ポテチ』。被災後の宮城・仙台でオールロケを行い、同じ年・同じ日に生まれた2人の青年がたどる奇妙な運命を描いた本作で、主人公の今村を演じるのが濱田岳(はまだ・がく)。独特な語り口が特徴的な個性派が、自ら“友人”と語る中村監督との関係を語ってくれた。

9歳から始まったラッキーの連続

――1997年、9歳のときに現在の事務所にスカウトされたそうですが、幼いながら芸能界への憧れはあったのでしょうか?

 芸能界への憧れみたいなものは、まったくなかったですね。両親も別にそういう仕事に就いてほしいとも思ってなかったようです。ただ、事務所に所属するのも、レッスンを受けるのも、お金がかからないということだったので、「それでTVや映画に出れたらラッキーじゃない?」と親が言ってくれたことを覚えています。そうして初めて受けたオーディションで、合格してしまったんです。

――それはダウンタウンの浜田雅功さんが主演されたドラマ「ひとりぼっちの君に」ですか?

 そうですね。浜田さんと一緒に暮らすことになる子供役だったんですが、ホント、右も左も分からなかったですね。夜なのに、おはようございますって言うことに抵抗があるズブの素人でした(笑)。そして、今に至る感じですが、とにかく宝くじも買わなきゃ当たらないのと同じ感覚で、事務所に入ったんです。

――その後、本格的に俳優の道を志されたのは、やはり2004年に生徒役で出演した「3年B組金八先生(第7シリーズ)」ですか?

 その頃、単純に学業を選ぶか、今やっているお仕事を続けるか、の二者択一になったんです。それまで、芸能人でやっていくつもりは全然なかったんですが、私立の学校に通っていて、(撮影のため)2クール(6カ月)、学校に行けないというのはありえないわけですよ。でも、この仕事は、やりたくても出られない人たちがたくさんいますし、そこに僕が呼んでもらえることは光栄だし、選ばれた人として自覚を持たなきゃいけないと思い始めて……。悩んだんですが、選んだ答えは「お仕事をする」でなく、「勉強はいつでもできる」。9歳から始まったラッキーの連続がいつまで続くか、これからも運だめししてみようという感覚に近いですね。だから、未だに「俺は一生役者で喰って行くんだ!」と思ったことはないですし、口に出して言ったこともないですね。

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2012.05.12(土)
text:Hibiki Kurei
photographs:Mami Yamada
styling:Norihito Katsumi(Koa Hole inc.)
hair&make-up:Misato Ikeda