初めての映画で乗り越えた壁

――その後、俳優として、転機になった作品を教えてください。

 コンテストの翌々月にはドラマ「わたしたちの教科書」でデビューしているんですが、その前に撮った最初の映画『DIVE!!』ですね。初めて受けて、初めて受かったオーディションでした。そこで熊澤尚人監督にスゴく怒られたんです。何度も「帰れ!」「向いてない!」とか、「まっすぐ立て!」と言われました(笑)。キツさと悔しさのなか、芝居と向き合っていきました。水泳の飛び込み競技の話ですが、主人公の弟役ということで、練習合宿に参加することもなく、共演者と一緒に乗り越えるということもできなかったんです。

――そんな状況のなか、乗り越えることができたということですか?

 撮影が終わったときは「大変だった」という印象しかなかったんですが、完成した作品を試写室で観たときに、とても感動したんです。今に比べれば、まったく芝居が巧くなかったけれど、スクリーンのなかで己ではない己の姿を、そして一緒にお仕事させてもらった人たちの名前をエンドロールで観たことが大きかったと思います。それで、役者という仕事を続けていこうと思いました。

2018.05.04(金)
文=くれい響
撮影=平松市聖