素に近い自分が観られる主演映画
『台湾より愛をこめて』

――劇中で漫才コンビを組んでいるアサリ役の前野朋哉さんとは、実際「M-1グランプリ」にも出場されていますが、コンビを組まれていかがでしたか?

 役でもコンビを組むことは、また特別な関係性だなと思いました。相方のダメな部分をいっぱい見ることができますから、ちょっと夫婦みたいな感じですね。前野さんはポンコツキャラなんで、その愛おしさも含めて、現場ではみんなでイジっていますし、前野さん自身もドMなので、それを喜んでくれるんですよ。そんな夫婦のような関係性で、ひとつの壁を乗り越えた感じがします。

――芸人といえば、最新主演映画『台湾より愛をこめて』でも、売れない芸人・雄介役を演じていますね。

 「わろてんか」の撮影中に、この映画が決まったんですけれど、何か縁があるんだろうな、と思いました。憧れもあって、個人的に芸人さんはリスペクトしていますから。(元相方役の)おっちー(落合モトキ)との絡みに関しては、まったく心配いりませんでした。こっちが適当なことをやっても、必ず返してくれるし、こっちも楽しくなるんですよ。この映画の相手役がおっちーで本当に良かったと思います。

――台湾3日間、東京1日間というタイトな撮影のなか、どうやって落合さんや監督との関係性を作ったのでしょうか?

 1日だけのリハーサル後、ごはん会をやって、二次会に行ってからの、台湾ロケだったんですが、「よぉ、親友!」みたいになっていたんですよ。しかも、撮影は台本の流れに沿ってアドリブをするぐらいの空気感。僕もアメリカ村の古着屋に買いに行ったくらい、衣裳も自分たちで持ち寄って、まるで自主映画のようなノリも楽しかったです。そのため、雄介ほどヘタレじゃないですが、伸び伸びと芝居をしている、素に近い僕が観られると思います。

2.5枚目で天下を獲りたい!

――今年、30歳を迎えますが、今後どんな俳優を目指したいなど、将来の展望などがあれば教えてください。

 作品を観た人に笑顔や元気を与えたいので、この映画のようなコメディが大好きなんですよ。だから、これからも三枚目路線は続けていきたいし、熱かったり、ちょっと切なかったりするドラマがその中で演じられたら、さらにいいですね。最終的には、2.5枚目で天下を獲れるように頑張っていきたいです!

大野拓朗(おおの・たくろう)
1988年11月14日生まれ。東京都出身。10年、映画『インシテミル~7日間のデス・ゲーム~』で俳優デビュー。近作では、NHK連続テレビ小説「わろてんか」の芸人キース役が話題に。主な出演作に、映画『猫忍』(主演)、『サバイバルファミリー』『高台家の人々』『セーラー服と機関銃―卒業―』やミュージカル「ロミオ&ジュリエット」(主演)がある。待機作に、舞台「シラノ・ド・ベルジュラック」など多数。

『台湾より愛をこめて』
売れない漫才コンビの雄介(大野拓朗)と光一(落合モトキ)は、訪れた台湾で歌手を目指す少女リンと出会い、互いに夢をかなえて5年後に再会することを約束。約束の日を数日後に控え、会社員になっていた光一は雄介に突然「今から台湾へ行こう」と言い出す。
http://taiwan.united-ent.com/
(C)「台湾より愛をこめて」製作委員会
2018年3月24日より、新宿シネマカリテほかにて公開。

くれい響 (くれい ひびき)
1971年東京都出身。映画評論家。幼少時代から映画館に通い、大学在学中にクイズ番組「カルトQ」(B級映画の回)で優勝。その後、バラエティ番組制作を経て、「映画秘宝」(洋泉社)編集部員からフリーに。映画誌・情報誌のほか、劇場プログラムなどにも寄稿。

Column

厳選「いい男」大図鑑

 映画や舞台、ドラマ、CMなどで活躍する「いい男」たちに、映画評論家のくれい響さんが直撃インタビュー。デビューのきっかけから、最新作についてのエピソードまで、ぐっと迫ります。

2018.03.23(金)
文=くれい響
撮影=佐藤 亘