カタカナに漢字のルビを振る「逆ルビ」

キーン『ドライヴィング・サタディ・ナイト』(1981年)

カリフォルニア・ブリーズがきみのハートを直撃!
限りなきインスピレーションと疾走する爽快感。
今、都会に最も似合うドライヴィング・ショック(衝撃音)!

 最後にご紹介するのは、トム・キーンとジョン・キーンの兄弟を中心とするバンド、キーンの1981年のアルバム。当時彼らはなんと16~17歳で、作編曲・演奏・プロデュースまで自分たちで行っている実力の持ち主だ。そのTOTOを思わせる疾走感あるサウンドは帯の惹句通りなのだが、やはり最後のルビが気になってしまう。

 逸脱したルビ文化の極め付けは、カタカナ英語に漢字のルビを振る「逆ルビ」現象だ。「ドライヴィング・ショック」を「衝撃音」と読ませるというのは、一体どういうつもりなのだろうか。

 もう一度出発地点に戻って考えると、ルビとは本来、漢字が読めない時のためのものであり、漢字のルビを振ってしまっては何の意味もない。また、ルビの字間が広く空き過ぎているのも何だか面白く感じられ、字間に星マークを入れたくなる間抜けさがある。

 今回ご紹介した4枚のアルバムの帯では、雰囲気さえ出せればルビの用法はもはや何でもアリ、という自由すぎる文化をお楽しみいただけただろうか。次回は帯のキャッチコピーに登場する「ダジャレ文化」についてご紹介しようと思う。

福田直木(ふくだ なおき)
1992年生まれ。東京都出身。AORやフュージョンを中心に聴き漁る音楽好き。学生時代にはピアノとドラムを習っていたがあまり長続きせず、DTMに熱中したことで作曲に目覚める。自身の所属する音楽ユニット、ブルー・ペパーズでは作編曲やボーカルなどを担当。趣味はカレー屋巡りとレコードの帯の蒐集。千葉ロッテファン。
Twitter https://twitter.com/danaoki0917

ブルー・ペパーズ
東京都在住の福田直木と井上薫による音楽ユニット。大学生時代の2015年に発表した『ブルー・ペパーズ EP』でデビュー。他アーティストへの楽曲提供などを経て、2017年11月に1stフルアルバム『RETROACTIVE』をリリース。AOR、ジャズ、フュージョン、ラテンなど様々なジャンルを追究し、それらのエッセンスを盛り込みつつも「聴きやすいポップス音楽」というフォーマットに落とし込むバランス感覚を大切にしている。
公式サイト http://bluepeppers.tokyo/

ブルー・ペパーズ『RETROACTIVE』
待望の1stフルアルバムには、これまでの作品でもおなじみのヴォーカル・佐々木詩織に加え、ドラムスの佐野康夫、キーボードの森俊之などベテラン勢も参加。彼らが南波志帆に提供した「コバルトブルー」のセルフカヴァーでは、ヴォーカルに星野みちるをフィーチャー。「ずっと」「秋風のリグレット」「6月の夢」など、既発表曲のアルバムヴァージョンも収録。
VIVID SOUND 発売中
2,500円(税抜)