落ち武者がリア充カップルに変身!

【日本盤】ビル・ラバウンティ『サンシャイン・メモリー』(1982年)

サザン・カリフォルニアのサンシャインに溶け込む純LA産AOR。
優しいまどろみの午下り、今日はビル・ラバウンティのメロウな歌声で、気分はとっても爽快!!

 まずはAORの名盤として語られることの多い、ビル・ラバウンティの4枚目にあたるこのアルバムから。

 彼の安定感あるソングライティングと、腕利きのセッション・ミュージシャンによる演奏は、まさにAORのお手本のような図式だ。

 注目の帯の方は、パンチ力に今ひとつ欠けるものの、こちらもイメージ戦略のお手本のようなキャッチコピーが躍っている。

 この手の帯にはアメリカの地名が登場することが多いのだが、キャッチコピーを書いた人の何割が実際にその地に行ったことがあるのか、アンケートを取ってみたいところだ。

 また、原題のセルフ・タイトルでは売れないと判断したのか、邦題も『サンシャイン・メモリー』と変更されている。もはや「音以外は何でもイジってしまえ」という潔ささえ感じる。

【オリジナル盤】Bill LaBounty“Bill Labounty”(1982年)

 だが、そうなると気になってしまうのは、オリジナル・ジャケットを見たときのインパクトだ。

 通称「落武者ジャケ」である。これを見て「気分はとっても爽快!!」とは言えないだろう。冴えない男をリア充のカップルに差し替えるなんて、まったく酷い仕打ちだ。

2018.01.26(金)
文=福田直木(ブルー・ペパーズ)
撮影=平松市聖