キャラクターを反映させた
衣装の色が語るメッセージ

 衣装担当チームが準備を始めるのは、撮影開始の半年前。デザイン画の作成やファブリックの選定と染色など、多くの工程を踏んで一枚の衣装ができあがりますが、なかでもファブリック選びや染色には、非常に微妙なメッセージが秘められていることがあるようです。

死喰い人の衣装案とファブリックのサンプル。実は黒の無地ではなくパターンが入っていることがわかります。

 例えば、『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』のなかで、アンブリッジが着ているピンクの衣装。最初から最後まで、ピンクが基本の彼女ですが、よく見ると、ピンクのトーンに微妙な変化があるのです。

 「はじめは、淡いピンク、そして権力を身につけると同時に、濃く強いピンクへと変化しているんですよ」とローレントさん。サンプルが並べられたボードを見ると、その違いは一目瞭然です。

左:アンブリッジの衣装のデザイン案とファブリックのサンプル。権力を身につけるごとに淡いピンクから濃いピンクに衣装が変化していきます。
右:アンブリッジの衣装の変化について説明するローレントさん。

 ヴォルデモートの衣装にしても、スクリーンのなかでは一見濃い緑色に見えますが、よく見るとさまざまなトーンの緑に染められ、裾に向かうほど濃くなっているのがわかります。宙を舞うような動きが多い分、なるべく軽く見えるマテリアルということで、素材はシルクです。

左:さまざまな異なる緑のトーンが美しいヴォルデモートの衣装。
右:スクール・パーティーでのロンの衣装。やはりオレンジ系の色合いです。

 「役柄によっても、それぞれ基本となる色がありますね。例えばハリーだったらジーンズ系、ロンだったらオレンジっぽい色といった具合に、シリーズの全作品を通して一貫したパレットがあります」というローレントさんの話を聞いてから、映画を見直してみると、なるほど、と頷くことしきり。

左:ダンブルドアのイメージボードを手にするローレントさん。
右:ダンブルドアの衣装の刺繍には、数週間の時間を要したのだそう。

 そんなローレントさんのお気に入りの衣装は「どの衣装もすべて必要があって作られたものなので、どれが特別、というのは言いづらいのですが、強いて言うなら、自分が最初にこのシリーズに関わった3作目のダンブルドアの一連の衣装ですね。役者もマイケル(=マイケル・ガンボン。2作目までのダンブルドア役リチャード・ハリスが急逝したため)になって1作目で、思い出深い作品です」とのこと。美しく繊細な刺繍がほどこされたダンブルドアの衣装、ぜひ注目してみてください。

ハグリットやスネイプと並んで、ダンブルドアの衣装も、大広間のセットのなかで見学できます。実はとても手の込んだ装飾が施された衣装です。

Warner Bros. Studio Tour London
(ワーナー・ブラザーズ・スタジオ・ツアー・ロンドン)

所在地 Studio Tour Drive, Leavesden WD25 7LR
http://www.wbstudiotour.co.uk/

【取材協力】
英国政府観光庁

http://www.visitbritain.com/jp/ja