小浜の豊かな土と海と水と空が
どの料理からも感じられる

(5)「自家製バター 玉ねぎのソテーをのせたフォッカッチャ」

(6)「福井産コシヒカリと自家製バター、銀杏のリゾット トリュフ」

 福井が原産であるコシヒカリは、自家製バターの甘みを受け止めながら、たおやかに笑う。しみじみとした美味しさが広がる。

(7)「かぼちゃとあさりのズッパ(スープ)」

 かぼちゃは、野暮ったい姿がどこにもなく、海の滋養と抱き合いながら自らの養分を誇らしげに歌う。シェフ曰く「カボチャの畑から海が見えるので、牛乳でのばさずに、あさりのジュでのばしました。するとかぼちゃのミネラルが締まりました」。

(8)「ワインの搾りかすのぶどうでマリネした鴨のソテー 完熟梅のソース、クレソン炒め、生の椎茸添え」

 田んぼに舞い降りた鴨は、血な味を滴らせながら、舌に根をおろし、力強い野菜の味と呼応する。

このワインの搾りかすが、おいしい料理を演出する。

(9)「自家製ロビオラチーズ」

(10)「大四郎柿のジェラートと完熟梅のソース」

 大四郎柿は、実に包容力のある甘さで、完熟梅の酸味と舞う。

(11)「自家製リコッタのマスカルポーネとジェラート」

 地元酪農家が誇る牛乳で作ったチーズとバター、おばあちゃんが持ってきたという梅干に柿、サトイモや銀杏、イチジクにコシヒカリ、ツバスに鴨、山で採ったクレソンに、生で食べられる椎茸、人参の葉やアサリ。すべての皿に小浜がある。小浜の豊かな土と海と水と空がある。

 杉崎シェフはいう。「料理人が美味しい料理だけを作る時代は終わったと思います。社会貢献もしていかないと。僕は小浜の生産者たちの未来を少しでも変えたい」。

 こういう料理人がいるからこそ、地方に出かける意味がある。

ラヴェリタ
店名の意味は「真実」。

所在地 福井県小浜市小浜塩竈35-1
電話番号 0770-64-5778
営業時間 11:30~15:00、18:00~
定休日 不定休
http://www.laverita.jp/
※完全予約制

マッキー牧元(まっきー・まきもと)
1955年東京出身。立教大学卒。(株)味の手帖 取締役編集顧問 タベアルキスト。立ち食いそばから割烹、フレンチからエスニック、スイーツから居酒屋まで、全国を飲み食べ歩く。「味の手帖」 「銀座百点」「料理王国」「東京カレンダー」「食楽」他で連載のほか、料理開発なども行う。著書に『東京 食のお作法』(文藝春秋)、『間違いだらけの鍋奉行』(講談社)、『ポテサラ酒場』(監修/辰巳出版)ほか。

Column

マッキー牧元の「いい旅には必ずうまいものあり」

立ち食いそばから割烹、フレンチからエスニック、スイーツから居酒屋まで、全国を飲み食べ歩く「タベアルキスト」のマッキー牧元さんが、旅の中で出会った美味をご紹介。ガイドブックには載っていない口コミ情報が満載です。

2017.12.21(木)
文・撮影=マッキー牧元