百三十余年の変化がわかる展示室も

左:2階の寝室。2室に分けられていたため、左右で微妙に装飾が異なる。左側は陸上の植物、右側は水中の植物をモチーフにしたデザインとなっている。
右:寝室横の小サロンの天井。明るく開放的な雰囲気を醸し出す。

 お客さまをもてなすための1階に対し、2階はプライベートな空間として寝室やバスルームが配置されています。寝室の装飾にも植物がモチーフとして使われていますが、ダイニングルームに比べてずっとシンプルで落ち着いた雰囲気。

 寝室に続く広いベランダには、手すりの代わりにベンチを配し、その背もたれにあたる部分に金網を用いることで部屋から外を眺めた時に視界を妨げないよう工夫されています。

屋上部分も見学可能。コーナーにはイスラム風の小塔が建てられている。
ビセンス邸の変遷を説明している展示室。当初は庭に大きな噴水があったり、敷地が大きく広がり少し離れた大通りまで届いていた時期があったりと、130年余りの間にさまざまな変化があったことがよくわかる。

 また、1階の喫煙室の上にあたる部分には小さなサロンがあるのですが、その丸天井には一種のだまし絵が描かれ、実際よりも天井が高く感じられる効果を生み出すなど、実用性とデザイン性を両立させるのが得意なガウディらしいアイデアがそこかしこに生かされています。

2階ベランダ。作り付けのベンチが手すりの代わりとなっている。
地下スペースにあるギフトショップ。モデルニスモをテーマにしたおしゃれな小物も多い。

 後のガウディ作品には欠かせない曲線を多用したデザインこそ、まだほとんど用いられていませんが、当時の他の建築家が作った建物とは明らかに異なるこのビセンス邸には、若きガウディのインスピレーションがぎっしり詰まっているように思えます。

 展示室には、当時の映像や、繰り返された増改築の資料など、興味深い資料がたくさん展示されているので、そちらもぜひゆっくりとご覧ください。

左:敷地内にカフェテリアも近日オープン予定。
右:ガウディならではの、美しい鉄細工もそこかしこに使われている。

Casa Vicens(カサ・ビセンス)
所在地 Carrer de les Carolines, 20-26, 08012 Barcelona
電話番号 93-547-59-80
開館時間 10:00~20:00
休館日 1月1日、1月6日、12月25日
入館料 大人 16ユーロ(ガイドなし)/19ユーロ(ガイド付き)
アクセス メトロ3号線「Fontana」駅もしくは「Lesseps」駅より徒歩約5分
https://casavicens.org/
※いずれの場合もチケットは入場時間指定制のため、希望の日時のチケットを購入するには、ウェブサイトから事前のオンライン購入がお勧め。

坪田みゆき(つぼたみゆき)
バルセロナ在住、コーディネイター。大阪外国語大学(現・大阪大学外国語学部)イスパニア語学科卒。在東京スペイン政府観光局勤務などを経て、2004年よりバルセロナ在住。バルセロナ、バレアレス諸島(マヨルカ島他)、バスク地方などを中心に、スペイン全土の取材・撮影コーディネイトの他、通訳・翻訳業務も行っている。http://spainbcn.exblog.jp/

Column

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文・撮影=坪田みゆき