太陽から吹く風が
極北の空を輝かせる

夕暮れのダウンタウンの気温。1月、2月はマイナス40度に達することも。

 星空にぼんやりと見えた淡い光の筋は、やがてエメラルドグリーンの帯となって天空の半分を覆った。光の帯が質の良いシルクのように柔らかく揺れる様子から、天の羽衣という言葉が思い浮かぶ。オーロラとはローマ神話の曙の女神の名であるけれど、この壮大な自然現象を見ると神聖な気持ちになるのは、昔も今も変わらないようだ。

 北極線まであと500キロの北の街、イエローナイフはオーロラ観賞の名所として知られる。発光現象が起こるメカニズムを理解しておくと、この街でオーロラがよく見える理由を理解しやすいだろう。

近そうに見えるオーロラだが、高度100キロ以上の大気圏での現象。

 太陽が発したプラズマの流れ(太陽風)は地球へ向かう。ここで地球の磁気(地磁気)がバリアの役割をして太陽風をはね返す。この過程で電気が生まれ、上空の酸素などの分子、原子が電気を帯びる。通常よりエネルギーを蓄えた粒子が、元の状態に戻るために光を放出するのだ。

 イエローナイフは特にオーロラが頻繁に発生するエリアの中心に位置する。また、冬場は晴天が多くて空気が乾燥することも好条件。発光現象は高度100キロ以上と、雲よりはるかに高い位置で起こるため、曇るとオーロラが見られないからだ。イエローナイフが平らな土地で、オーロラが山に隠れる心配がないことも観賞には有利だ。

 20年以上も現地でオーロラを撮り続ける写真家の田中雅美さんは「科学的に解明されていない部分は多々ある」と前置きしたうえで、「写真撮影を通して言えるのは、イエローナイフでは四季折々のオーロラの色が楽しめるということです」と語る。となると一生に一度と言わず、オーロラは何度でも楽しみたい。

オーロラ・ベルトのど真ん中!

 オーロラが出現するのは、両極にドーナツ状に広がるオーロラ・オーヴァル(緑の楕円)と呼ばれるエリア。太陽風の強さで楕円の形状は変化する。その中でも頻繁に現れるオーロラ・ベルトという一帯があり、その日のコンディションによってオーロラが見える場所は変化するが、イエローナイフはオーロラ・ベルトの中心に位置するので出現する可能性が高いのだ。

オーロラには様々な形が

(C)Aurora Village

 田中さんによれば、オーロラの出現には基本の形がある。写真のカーテン状に加え、天空から線となって降り注ぐコロナ、そして渦巻き状、1本の筋、の計4タイプ。特に赤いコロナは珍しく、10年に1~2度の遭遇率とか。

季節によって色も形も違う

 オーロラの色に違いがあることは、科学的には明らかになっていない。けれども撮影すると確かに違う。田中さんによれば、濃い紫色は春特有の色だとか。経験的に黄色や橙色は、太陽風が強い時に現れる傾向だという。湖面に映るダブルオーロラは、湖が凍る前の8月、9月だけの限定モノ。秋は波形が少ない比較的シンプルな形が多い。冬は出現率がもっとも高く壮観な眺め。

●Winter

(C)Masami Tanaka

●Spring

(C)Masami Tanaka

●Summer

(C)Masami Tanaka

●Autumn

(C)Masami Tanaka

防寒と予報チェックで準備万端

郷に入れば郷に従え! 日本仕様じゃ凍えますよ~。(C)Aurora Village

 各ツアー会社が北極探検でも活躍したカナダグースのダウンジャケットをレンタルしているので利用すべし。天気予報と、オーロラ予報は要確認。

撮影=志水 隆
取材・文=サトータケシ
地図=Cmap
協力=カナダ観光局、ノースウエスト準州観光局