韓国の花美男(美男子)スターの代名詞であるカン・ドンウォン。いまや俳優として人気、実力ともに韓国トップの地位にある。少年のようなかわいらしい雰囲気は健在だが、映画『MASTER/マスター』では刑事役に初めて挑戦し、逞しい魅力を発揮。かつてはシャイな青年だったが、36歳になったドンウォンは、ひとなつっこく、冗談を言って笑わせる、余裕ある大人の男性になっていた。

撮影現場で怪我をした時は
引退すら覚悟した

――『MASTER/マスター』、とても面白く、ハラハラしました。実際にあった巨額詐欺事件を追う刑事役ですが、演じた感想を教えてください。

「フィリピンで1カ月ロケをしたんですが、連日、朝から30度以上あるので、かなり大変でした。マニラのスラム街での撮影で、そこでは人々が過酷な暮らしをしているんです。その様子は想像以上で、最初は見るだけで胸が痛みました。この映画は腐敗した社会や政治を描いていますが、マニラでは貧富の差を強く感じましたし、演じながらも胸に響くものがありました」

――刑事役が初めてとは思えないほど、銃の撃ち方も決まっていましたね。ホルスターから抜いて銃を構えるシーンは、刑事役の多かった日本の松田優作を彷彿とさせるものがありました。

「ありがとうございます。特に何か特別な準備をしたわけではなく、ただ、やってみただけなんですよ(笑)。アクション監督の指導がうまかったからでしょう。どう構えたらかっこよく見えるか、は少し考えましたが、韓国の男性はほとんどみんな軍隊に行きますから、そこで銃の扱い方を覚えるんです。僕もピストルだけでなく、機関銃だって撃つことも出来ますよ」

――今回の役のために何かリサーチをしましたか?

「役作りとしてはシナリオを読んで、キャラクターを理解して、組み立てていっただけで、特別なことはしていません。同僚役を演じたオム・ジウォンさんは僕らが演じる知能犯罪捜査班について調べるため、実際に捜査官の人に会いに行ったんです。『一緒に行かない?』と誘ってくれましたが、『あ、僕はいいよ』って言っちゃいました(笑)。なぜかというと、実際の知能犯罪捜査官というのは、銃を使わないんですね。映画ではいろんなメンバーが招集されて捜査チームが結成されますが、普段はパソコンとの闘いなんです」

――激しいアクションもありますが、特別なトレーニングをしたんでしょうか? また現場でアクシデントはありましたか?

「ガラスが割れるシーンで、その破片が顔や首に刺さって、顔中血だらけになり、4針ほど縫うことになってしまいました。もう、引退も覚悟しなければならないか、と思うほどでした。トレーニングとしては体を大きくするため、よく食べ、よく鍛えました。アクション監督がボクサー出身だったので、ボクシングのスパーリングを取り入れたんです。スパーリングは3分やって休憩、を繰り返すんですが、1分でもきつかったですね」

2017.12.02(土)
文=石津文子
撮影=五十嵐 瑛仁(TRON)
スタイリスト=KIM HYUN KYOUNG
メイク=AN SUNG HEE
ヘア=LEE SEON YEONG
衣装=SISE