通りすがり絵

なかむらるみ

今やファッションもカルチャーもガラパゴス化してますが、人間のタイプは地域によって属性が分かれるようです。そこで『おじさん図鑑』で計り知れない観察眼を披露したなかむらるみさんが、通りすがって思わず二度見した人達を観察&採取。果たしてどんな人種が!?(不定期更新)

※ 連載中は最新の3話を公開しています。

 “腰パン”とは、腰でパンツ(ズボンのほう)をはくことを言う。本来、くびれたウエスト部分ではくズボンを、ズルズルズルズルと腰骨のところまで下げて、ベルトでとめる。ルーズな雰囲気が出るので、若い人に人気のはき方だ。年配の人から見れば、だらしないとも言う。わたしの記憶だと、自分が中学生のころ(1993年くらい)から流行り出した。クラスのかっこいい男の子からじょじょにズボンを下げはじめた。だんだんとみんなのズボンは下がっていき、ついには制服でも私服でも体育着のジャージでもなんでもかんでも腰パンをしていた。下げれば下げるほどイケているみたいな雰囲気になってきて、下げすぎてうっかりパンツ一丁になってしまった子もいた。“だらしない”ので、先生には大不評だったが、先生がやめろと言えば言うほど、それは特別で、“かっこいいもの”になるのだった。

 20年近くたった今でも、腰パンは健在のようだ。マンションでエレベーターを待っているとき、ふと前の10代の男の子が腰パンをしているのに気づいた。なつかしさを感じると同時に、違和感を覚えた。なんと、お尻のプリンプリンが出ているのだ。「プリンプリンが出てるっ!」、誰かに言いたかったが、もちろん自分しかいないので、ひとりで衝撃をかみしめた。どういうことかと言うと、腰パンをしているために見えてしまっている下着のパンツが、フィット感のあるいわゆるボクサーパンツなのだ。それはお尻の形にきれいにフィットしていて、桃みたいなお尻のラインがはっきりと出ている。これにはビックリした。20年前は、男の子のパンツと言えばチェックのトランクスだった。パンツは見えていたが、トランクスではお尻の形が分かりにくいので、それは下のTシャツをちょこっと出すみたいな、差し色のような扱いで、お尻の形は意識させなかったのだ。なんというか、腰パンとはくびれをつくらないスタイルで、肩から足まで真っ直ぐなラインこそ、腰パンの醍醐味だと思っていた。だから、途中に桃の丸みがあっては腰パンのかいがないではないか! うちのマンションの子だけかなと思ったら、池袋でも見かけたので、別に特別変なことではないみたいだ。

 女の子だって負けていない。流行りの短パン(今はショーパンと言うらしい)が、どんどん短くなっている。こちらもついに、下側のプリンプリンがはみ出ていて、歩くたびふるえているではないか。これは……なつかしの……はみケツだ……。「はみケツ」とは、おケツがはみ出してしまうことだが、もしはみケツした場合は、女子同士でこっそり教えあうという暗黙のルールがあったはず。お尻が出てしまうことは、断固恥ずかしいものと思っていた20年前と、今とは、お尻の解釈がだいぶ違うようである。

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なかむらるみ 近況

8カ月の子どもを連れて台北と台中に行ってきました! 台湾の人は子どもに優しいというか、慣れている感じで、とても居心地がよかったです。また行きたいです。

プロフィール

1980年東京都新宿区生まれ。イラストレーター。武蔵野美術大学造形学部デザイン情報学科卒。雑誌、書籍などを中心に様々なイラストを描いている。「CREA」「ビッグコミックオリジナル」「翼の王国」などで連載中。著書に『おじさん図鑑』(小学館)、『おじさん追跡日記』(文藝春秋)。好きなものは、コーヒーとリュック。

ホームページ:「TSUMAMU」 http://www.tsumamu.net

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