カニのリゾットを日本酒とともに

アロマティックなぶどうの凝縮感と募る期待。

 客席が徐々に埋まり始めた頃、いよいよディナータイムがスタート。南フランスよりやってきたスパークリングワインのウェルカムドリンクに続き、まもなくして前菜、サーモンのミキュイが供されます。

自家製パンの素晴らしさにも定評あり。写真はパン・ド・カンパーニュ。
パリパリに焼いたサーモンの皮が、香ばしさのグッドアクセント。

 限りなくレアに仕上げたサーモンの上に乗るのは、生姜とディル、青りんごを刻んでマリネしたもの。強い芳香を持つスパークリングに伴なった甘酸っぱさをキュンと感じたあと、春鮭のきれいな脂の甘みが、じーんわりと舌に纏います。

カンパーニュで残らずぬぐいたくなる美味しさ。

 続いては、新玉ねぎの冷製ポタージュ。新玉ねぎを発酵させパウダー状にし長芋と蕎麦の実を加えた、滋味のパンチ感じるスープの中にひそむのは雲丹! 濃厚ながら、どこまでも上品に切れよく仕上げています。

発酵させた焦がしネギがいい仕事。

 魚介つながりでさらに攻めてきたのは、カニのリゾット。焦がしネギとカニが合わさって、食べたとたん、グイッと味が立ち上がり、やがて横に広がり、さらに奥行きも感じさせる。まさに旨みが、縦横無尽に口の中を駆けめぐります。ペアリングである千葉の蔵元「寺田本家」の磨きの少ない純米酒との相性ったら!

吊られた木々がキャンドルの光を通して壁に投影されて。

 この頃になるとすでに日はすっぽりと暮れきり、ぐっとメロウなムードに。夥しい数のキャンドル使いで、いっそうのファンタスティックな世界が広がります。

2017.11.21(火)
文・撮影=山村光春