少女の容姿のまま800年も生きた
女性の伝説がリアルに残るお寺

不老不死の女性の伝説が残る空印寺の洞窟。ここは見学できるようになっている。

 旅の2日目は、小浜方面へ。訪れたのは、海の近くにある空印寺(くういんじ)。ここには、人魚を食べたばかりに少女の容姿のまま800年生きる運命を辿った不老不死の女性、八百比丘尼(やおびくに)が、長い人生の最後に籠ったと伝わる洞窟が残されている。

空印寺の本堂を拝観すると、こんな可愛らしいクッキーをいただける。デザインは八百比丘尼の伝説がモチーフ。

 迎えてくれた42代目ご住職がこんな話をしてくださった。「江戸時代初期、5代目住職の夢枕に3度も八百比丘尼が立ち、『魂が落ち着く場所がなくさまよっている』と訴えたのだそうです。そこで、境内の洞窟に彼女の名前を彫った石を安置したところ、夢枕には出なくなったと言い伝えられています」。なんとも、リアルな伝説……。

 その洞窟は、今も残され、悪天候のとき以外は見学することができる。たしかに、奥行きが5メートルほどの洞窟に入ると、薄暗いなかに、5代目住職が彫ったであろう「八百比丘尼」と刻まれた石碑が見えた。

空印寺
所在地 福井県小浜市小浜男山2
電話番号 0770-52-1936

瓜割の滝でマイナスイオンを浴びてリフレッシュ!

 海のイメージが強い若狭だが、山にも素晴らしい景色がある。

 空印寺から車で20分ほどのところにある瓜割(うりわり)の滝は、ドライブ途中のリフレッシュにぴったりの場所。天徳寺境内奥の山麓一体が名水公園として整備されていて、マイナスイオンを浴びながら散策できる。

 この日は気温が高かったものの、ここだけはひんやりと涼しい。高純度のミネラル成分が溶け込んでいる滝の湧水は、まろやかでやさしく喉を潤してくれた。

重要伝統的建造物群保存地区に指定されている熊川宿。

 次に向かったのは、江戸時代の面影を残す若狭熊川宿。かつて、日本海から京都まで新鮮な魚を届けるべく人や馬が行き来した街道(近年、「鯖街道」と呼ばれるようになった)の宿場町として栄えたところだ。今も白壁の土蔵や古い家が残り、江戸情緒を忍ばせている。

鯖街道でひときわ目をひくカフェレストラン、「Saba*Cafe(サバ・カフェ)」。ログハウス調の店内は居心地満点。

 熊川宿を訪れたのにはもうひとつ理由がある。それは、鯖をパンに挟んだサバサンド。鯖街道の名物といえば、鯖寿しや焼き鯖だが、熊川宿から街道を挟んで目の前にあるカフェレストラン「Saba*Cafe(サバ・カフェ)」は、ユニークな鯖のメニューで人気を集めている。

 そのひとつがサバサンドだ。サバサンドといえば、トルコのイスタンブールのガラタ橋のたもとで食べた味が忘れられない。「イスタンブールのあの味を、日本で、しかも鯖の産地で食べられる!」と楽しみに訪れた。

口にした瞬間、ジューシーな鯖の味がパンにしみこむサバサンド。ポテトまでおいしい。

 お目当てのサバサンドは、イスタンブールで食べたものよりも、野菜がたくさん挟まって、ヘルシーなイメージ。

 ボリュームあるサバサンドを頬張った瞬間、鯖の油がパンに染みこんでなんともいえない香ばしさが口いっぱいに広がった。唐辛子と獅子ユズという柑橘類をブレンドした若狭の調味料、「柑なんば」を使った特製マヨネーズも、隠し味になっている。

「Saba*Cafe(サバ・カフェ)の敷地内には、ロードバイクのレンタルショップも。

 オーナーの反田良子さん、ご主人でフォトグラファーでもある和宏さんは、若狭が気に入り、大阪から転居してきた移住組だ。若狭じゅうをロードバイクでツーリングしているという和宏さんは、ロードバイクのレンタルショップ「鯖街道サイクリングハブ」も、カフェの隣にオープン。

 「気持ちがいいから試してごらん」という和宏さんのお言葉に甘えて、私も少しだけロードバイクを運転させていただいた。コツをつかめば、すいすい進む。若狭の緑や海を、ロードバイクで駆け巡ったら気持ちがいいだろうなあ。次回は、ロードバイクで旅する若狭を目標としよう。

Saba*Cafe(サバ・カフェ)
所在地 福井県三方上中郡若狭町熊川12-16-2
電話番号 0770-62-9048
http://saba-cafe.com/

2017.09.26(火)
文・撮影=芹澤和美