なぜマカオの名物スイーツに?

 そもそも、なぜエッグタルトがマカオの名物スイーツになったかという話をご紹介したいと思います。

「ロード・ストウズ・ベーカリー」創業者の故アンドリュー・ストウ氏 。(C)Lord Stow's Bakery

 エッグタルトの本場といえば、ポルトガルです。マカオは長くポルトガル統治を経験していますが、エッグタルトを本格的にマカオに持ち込み、商業的に成功させたのはロード・ストウズ・ベーカリー創業者で英国人のアンドリュー・ストウ氏です。

 マカオのホテルに勤務し、ポルトガル料理レストランのマネジメントを担当した同氏が1980年代にポルトガル・リスボンへ旅行した際、1837年創業の老舗カフェ「パステイス・デ・ベレン」の名物で、ポルトガルの伝統スイーツ「パステル・デ・ナタ」に出会います。「パステル・デ・ナタ」はポルトガル語でエッグタルトの意味。

 ストウ氏は、この味をマカオで再現すべく、独自のレシピ開発に乗り出し、英国のエッセンスを盛り込んだオリジナルスタイルのエッグタルトを創り上げ、これを看板メニューとする「ロード・ストウズ・ベーカリー」を1989年にオープンさせます。その後、口コミで評判が広まり、メディアに紹介されるなどして知名度が上昇。すっかりマカオを代表する名物スイーツとしての地位を確固たるものとしました。

開業当初の「ロード・ストウズ・ベーカリー」本店。現在も当時と同じ場所、同じ建物で営業している 。(C)Lord Stow's Bakery

 なお、アンドリュー・ストウ氏は2006年に亡くなりましたが、以降は娘のオードリーさんと妹のアイリーンさんが独自のレシピを受け継いでいます。

食べ比べてみよう!

「マーガレット・カフェ・エ・ナタ」の店頭とエッグタルト。

 ちなみに、「ロード・ストウズ・ベーカリー」と双璧を成すエッグタルトの名店として名前が上がるのが「マーガレット・カフェ・エ・ナタ」。こちらはマカオ半島の中心部に店舗を構え、行列ができる人気店として有名です。

 実はこちらのオーナーはアンドリュー・ストウ氏の元妻で、現在「ロード・ストウズ・ベーカリー」を切り盛りするオードリーさんの母にあたるマーガレット・ウォンさん。

  「ロード・ストウズ・ベーカリー」と「マーガレット・カフェ・エ・ナタ」のエッグタルトは近い関係にあるわけですが、微妙に食感や味わいが異なります。エッグタルトファンならずとも、ぜひ食べ比べを楽しんでいただきたいものです。

 エッグタルトはマカオを代表するスイーツとなっており、上記の2つのブランドだけでなく、市内の多くのカフェやベーカリーショップでも取り扱っています。

ロード・ストウズ・ベーカリー
http://www.lordstow.com/

勝部悠人(かつべ ゆうじん)
大学時代にポルトガル語を専攻。大学卒業後、日本の出版社に入社し、旅行・レジャー分野を中心にムック本の編集を担当したほか、香港・マカオ駐在を経験。2012年にマカオで独立起業し、邦字ニュースメディア「マカオ新聞」を立ち上げ、現地最新トピックを日本市場に向け毎日発信している。
マカオ新聞 http://www.macaushimbun.com/

 

Column

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文・撮影=勝部悠人(マカオ新聞)