ムンバイには、「西のタージ、東のラッフルズ」と並び称される、アジアが世界に誇る至高のホテルがある。

 市街地の喧騒をよそに、一歩中に入ればそこは別世界。

 スタッフの柔らかい笑顔、上質なサービスが待つ宿に、ぜひとも滞在してみたい。

正式名称:インド共和国
首都:ニューデリー
総面積:約329万平方キロメートル
人口:12億1000万人(2011年暫定値)
公用語:ヒンディー語
宗教:ヒンドゥー教(人口の約8割)、イスラム教、キリスト教など
通貨:ルピー(Rs.) Rs.1=約¥1.6(2012年2月末現在)
時差:日本時間-3時間30分
電話(国番号):+91

気品あふれる雰囲気と惚れ惚れするような笑顔

イスラム様式とルネサンス様式が見事な融合を成したパレスウィング

ザ・タージ・マハル・パレス

 威風堂々の外観を目にした瞬間、しばし深い感慨にふけってしまう。旅を愛するすべての者が一度はここにと憬れる、あのホテルだからだ。

 ザ・タージ・マハル・パレスが最初のゲストを迎えたのは1903年。以後、名実ともにムンバイのランドマークであり続けてきた。2008年11月に由緒あるパレスウィングが破壊されるという悲劇を乗り越え、10年8月、完璧なリノベーションの末に麗しく甦った。

 このホテルが特別であることは、綺羅星のごとく名が連なる宿泊者名簿が雄弁に物語る。政府要人はもちろん、バーナード・ショー、ミック・ジャガー、ジャクリーヌ・オナシス、デイヴィッド・ロックフェラー……、まさに枚挙にいとまがない。

 予備知識は頭の隅に置いておくとして、ゲストが体験するのは、気品に満ちた調度品と雰囲気、そしてふっと緊張を解きほぐしてくれるようなサービスだ。例えば、「シー・ラウンジ」。何十年もの間ここに勤めてきたであろう老ウエイターの、惚れ惚れするような笑顔。なめらかにテーブル間を移動しながら、神経は客の微動すら見逃すことがない。こういう人こそはホテルの宝だ。

右:グランド・ラグジュアリー・スイートのベッドルーム。目に明らかな高価なシルクがふんだんに用いられている
左:パレスウィングの最上階にある最上級のタタ・スイートのリビング。先ごろ、トム・クルーズもこの部屋に滞在したとか

 44のスイートルームはすべてが異なるデザインで、それぞれが個性の煌めきを放つ。最後に特筆すべきは食の充実だ。インド料理、中華、和食など、極上のレストランやバーが11カ所。どこに入っても間違いなし!

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photographs:Kinta Kimura
coordination:essendo