王道からオリジナリティあふれる逸品まで

 ここ数年天ぷらが熱い。

 静岡の「成生」や名古屋の「くすの木」など、今をときめく名店には新幹線でわざわざ訪れるものもいるという。そんななか、山が動いた……、ではなく、肉山のオーナー光山氏が、動いた。

 肉山とは予約が取れない店として有名な吉祥寺の赤身肉専門店だ。自身の中核である肉山はもちろん、「肉と日本酒」など、ブームとなる人気店を仕掛けてきた彼が今回手掛けるのは天ぷら。しかもオーセンティックな天ぷらなのだという。

 「天ぷら、寿司、中華、それぞれの店をやってみたいと、以前から思っていたんです」と語る光山氏。そんなある日、食関係の編集者から話が舞い込んできた。腕のいい天ぷら職人がいます、と。すぐに“お見合い”をし、とんとん拍子に話が進んだ。ことがスムーズに運ぶ時は、上手くいく時だ。

右から、光山氏、新垣氏。ナイスバッテリーだ。

 そして、2017年6月26日、華々しくオープンしたのが「旬恵庵 あら垣」。新富町のこのあたりは、京味出身の「味ひろ」もあり、ポテンシャルの高いエリアだ。

東京メトロ新富町駅から徒歩7分ほど。

 引き戸を開けると、料理人の新垣氏がお出迎え。

 沖縄県出身。中学を卒業すると同時に東京へ。日本料理を中心に35年間、料理人としての人生を歩んできた。ここにたどり着く直前は、勝どきで天ぷら店を任されていたという。

 白木が見事なカウンターは8席。作り手と食べ手が心地良い時間を過ごすのに、ちょうどいい大きさ。

貸し切りの場合のみ、9名が着席可能となる。

 この日は、本日の食材が並ぶ特等席に座らせてもらった。魚や野菜、どれもが早く食べてほしいと訴えかけてくるよう。

眺めているだけでわくわくしてくる。

 先付けはアマダイと雲丹。昆布の出汁で酒蒸しにした雲丹がうまい。

日本料理の腕前がさっそく発揮された一品。

 刺身は、アズキハタ、マコガレイ、ボタン海老。

土佐醤油のほか「野菜はこちらで召し上がってください」と自家製ドレッシングも付く。

 天ぷらのスタートは、定石の海老から。2本提供されるので、塩のみで1本、天つゆ&大根おろしでもう1本と食べ比べ。使用する油は綿実をメインに2種のごま油をブレンドしたもの。

海老の味が濃い。流行りの半生揚げにしていないのは、新垣スタイルか。

 クルマエビの頭の塩焼き。揚げたものが出てくるのはよくあるが、あえて焼いた形で提供。なぜ揚げではなく焼きに? と聞くと、「このほうがおいしいと思うからです」とシンプルな答えが返ってきた。この言葉が、まさか最後に響くことになろうとは。

ミソの香ばしい香り。たまらない。

 爽やかな緑がまぶしい、うりずん(琉球四角豆)。初夏を感じる沖縄の野菜である。今後も沖縄の素材を織り交ぜていきたいという。そして、新じゃがは、アンチョビソースがけで。うーん、これは白ワインが欲しい味!

オリジナリティあふれる一品に心躍る。

 ワインセレクションもなかなかだ。光山氏が元来ワイン好きということもあり、セラーのなかには、天ぷらとマッチするものがずらり。

ワインと天ぷらが、至福のひとときを与えてくれる。

 そして、江戸前の鱚(キス)。王道とオリジナルを交互に楽しめる。

ふっくら肉厚なキス。塩もいいが、大根おろしたっぷりの天つゆでも食べたい。

2017.07.17(月)
文・撮影=Keiko Spice