竜がのたうつ古城もあれば
21世紀スタイルの洒落た城も

威風堂々としたハーレック城はとてもよく保存されている。

 ウェールズの旅の楽しみの一つは古城巡り。しかし、英国随一の古城の多い土地だけあって、そのあり方も様々。

 不思議なポートメリオンの村から車で20分ほどのところにあるハーレック城は、前篇に登場したコンウィ城と同じく13世紀にイングランド王エドワード1世がウェールズ侵攻の拠点として築いた城。

左:塔の高みから村を見下ろして。
右:突如登場のドラゴンにどっきり。

 入り口のインフォメーションセンターなど、21世紀に増築された部分もあるが、荘厳な古城そのもので威風堂々として美しい。そして、中庭にはなんとドラゴンが! ちょっとドキッとするぐらい本当にそこに住んでいるようだ。

晴れ上がると美しく優しい表情を見せるウェールズの自然。

 この城との直接の関連はないのだが、ウェールズの国旗には赤い竜が描かれている。一つの伝説として、魔術師マーリンが、ブリテンの君主の塔の地下で赤い竜(ブリトン人)と白い竜(サクソン人)が戦っている時、コーンウォールの猪(アーサー王)が現れ、白い竜を破るまでこの戦いは終わらないと予言した――。

 12世紀に書かれた『ブリタニア列王史』にはそう記されているという。こんなところにも、アーサー王とウェールズの結びつきが登場して、興味深い。

海辺に並ぶパステルカラーの家が美しいニュー・キーの村。

 数ある古城の中には、街中にあって、現代的にホテルやウエディングに活用されている城もある。ハーレック城から、美しい海辺の村ニュー・キーを経て、カーディガンの町へ。

洒落たモダンなレストランも併設した現代の城、カーディガン城。

 ここにあるカーディガン城は、城の代わりに洒落たレストランが立っていて、一瞬どこにお城が? と思うのだが、町議会が購入して城の運営を行い、洒落たホテルとレストランを併設した21世紀スタイルの城なのだ。

900年を経た城壁に復元された、アイステズボドの勝者が座る椅子。

 900年の歴史を誇る城壁の一部はちゃんと残されている。1176年にウェールズの吟遊詩人の競技会の勝者が座ったという椅子も、復元されて置かれている。アイステズボドと呼ばれるこの競技は、今でも、ウェールズの芸術祭として形を変え、引き継がれているそう。

2017.06.23(金)
文・撮影=小野アムスデン道子