空間まるごと再現されていたエリアから、時代ごとに名画が展示されているエリアへ。この先は、誰もが知っている有名どころの作品が次から次へと登場する。

名画の世界に入り込んだかのような
不思議な臨場感を体験

名画を引き立てる額縁にも注目したい。地域および時代考証をし、できるだけオリジナルを忠実に再現している。

 ルーヴル美術館に展示されているダヴィッドの大作、通称「ナポレオンの戴冠式」(写真中央)は、ほぼ等身大の人物、約200人が描かれている作品。ぎりぎり近くまで寄って細部まで鑑賞していると、まるで自分がその中に入り込んだかのような感覚になりそうだ。もちろん作品との記念撮影は自由なので、登場人物のひとりになりきったショットをカメラに収めることも可能。

 この部屋では、現地ルーヴル美術館と同じ赤い壁で、左側にピアッツェッタの「聖母被昇天」、右側にジェリコーの「メデューズ号の筏」が展示され、三方を大きな絵画に囲まれているという贅沢な空間。名画のパワーゆえか、それぞれの世界にじわじわと引き込まれそうな不思議な気分になってくる。

お馴染みの名画が目の前に続々
アートを身近に感じる贅沢

ゴッホの作品の向こうに見える2点は、ボナールの作品。

 「ヒマワリ」に「自画像」「種まく人」……日本でとくに人気が高いゴッホの代表作のうち、8点が一挙に並んでいる。あまりにも有名すぎる作品とはいえ、近くで表面を眺めてみるとまた違う感動が見つかるはず。絵の具の厚塗りで有名なゴッホならではの、もりもりした立体感や、勢いのある筆づかいもリアルに再現されている。それも、名画との距離が近いからわかること。

 そして、ここでしか見ることのできないゴッホの「ヒマワリ」がもう1点。第二次世界大戦時の空襲で焼失した通称“芦屋の「ヒマワリ」”も陶板で再現、2014年10月より追加展示されている。深いロイヤルブルーの背景に明るいイエローが映える幻の「ヒマワリ」も、ぜひ間近で鑑賞し、見比べてみたい。

瀬戸内の海を目の前に見ながら
鳴門の幸を味わうランチ

鳴門名物の鯛をたっぷり味わえる鯛の刺身膳1,200円(税込)が一番人気。@レストラン・ガーデン(11:00~15:30、ラストオーダー15:00)

 1000点を超える全ての展示を見ようとすれば、全長4キロもの長い道のりになる。できることならまる1日かけて、ゆっくり堪能するのがおすすめ。お昼時には、レストラン・ガーデンで、ここならではの料理を味わいたい。

 流れの早い鳴門の海で育つ鯛は、身が引き締まってぷりぷりのおいしさ。美術館の目の前は、絶好の鯛の漁場とあって、朝どれの鯛と肉厚の鳴門わかめを味わえるメニューがずらりと並んでいる。そのほか、お馴染みの名画、レオナルド・ダ・ヴィンチの「最後の晩餐」をイメージしたメニューや、季節ごとのテーマに沿った期間限定ランチも見逃せない。

大自然に囲まれた素晴らしい立地
屋外の庭園で過ごすのも気持ちいい

ここから見えるのは、地上に位置する2階分。地下1階から地下3階までは、山の中にある。

 数々の名画のオーラを浴びて、底知れぬパワーをもらったら、庭園で自然の景色や風を感じながらしばしリフレッシュ。国立公園の一部とあって、鳥のさえずりも心地よいのどかな環境だ。

 この大塚国際美術館、はじめての訪問で名画をぐっと身近に感じるようになったら、好きな作品を観に海外へ出かける計画を立てる人もいるし、作品にまつわるストーリーを知ってもういちどここへ来る人もいるという。毎日開催されている定時ガイド(無料)や音声ガイド(有料)を利用すれば、より深い鑑賞が楽しめる。そして、ミュージアムショップで自分へのお土産を見つけて、この感動を持ち帰り、次のアート体験につなげるのもよさそうだ。

大塚国際美術館
所在地 徳島県鳴門市鳴門町鳴門公園内
電話番号 088-687-3737
開館時間 9:30~17:00(入館は16:00まで)
休館日 月曜(祝日の場合は翌日)
料金 一般 3,240円、大学生 2,160円、小・中・高生 540円
アクセス 詳細はこちら
http://o-museum.or.jp
※1月は正月明けに連続休館あり、その他特別休館あり、8月は無休

2017.06.09(金)
文=嵯峨崎文香
撮影=佐貫直哉