「山陰の小京都」と
呼ばれる倉吉を散策

白い漆喰壁の建物が並ぶ、風情のある倉吉の街を散策。

 三徳山から下山して向かったのは、車で約40分の倉吉。ここは、奈良時代から平安時代には国庁が置かれ、南北朝時代からは城下町として、江戸時代に一国一城令で城が廃された後は、商業の街として栄えた場所だ。

 石橋が架かる玉川沿いに並ぶのは、白壁に赤瓦の土蔵。参拝登山でボロボロになった私を、倉吉は優しく穏やかな風景で迎えてくれた。

白壁土蔵群の一角に立つ「元帥酒造・本店」は、創業を江戸時代に遡る老舗。

 街中には、古い蔵を改装して店舗に利用した「赤瓦」と呼ばれる14軒の建物がある。明治41年に建てられた銀行を改装したフレンチレストランや、老舗の造り醤油屋、創業160年の酒屋など、旅のお土産を探しながら、赤瓦を巡るのが楽しい。

元帥酒造・本店
所在地 鳥取県倉吉市東仲町2573
電話番号 0858-22-5020
http://www.gensui.jp/

レトロな「桑田醤油醸造場」。NHKの連続テレビ小説に出てきそうな雰囲気。

 立派な町屋造りの建物は、「桑田醤油醸造場」。建物は、地元の大工を京都の宮大工のもとに送り修行させ、建てたものなのだそう。長い土間の向こうに続く工場からは、甘い醤油の香りが。昔ながらの製法で、手間ひまかけて仕込んでいるのだろう。

桑田醤油醸造場
所在地 鳥取県倉吉市東仲町2591
電話番号 0858-22-2043
http://kuwatasyouyu.com/

甘い香りを漂わせる「米澤たいやき店」。昔ながらの焼き型で1つ1つ丁寧に焼き上げている。

 のどかな白壁土蔵群の風景はとても美しかった。だが、三徳山参拝登山で疲弊した身体を最も癒してくれたのは、倉吉のソウルフード、たい焼きだ。

 路地に漂う甘い香りに釣られて入ったのは、昭和23年創業の「米澤たいやき店」。もっちりとした白い皮に自家製の餡を包んだたい焼きは、1枚100円とリーズナブルなのに、店内のお茶やコーヒーまでサービス。そのおおらかさも、じんわりと心に響いた。

米澤たいやき店
所在地 鳥取県倉吉市堺町2-929-1
電話番号 0858-22-3565

 翌日はひどい筋肉痛に悩まされたけれど、やっぱり投入堂への登山は体験してよかったと思う。「日本で一番危険な国宝」と言われていることを知らずに登ったのは、今思えば幸いだったかもしれない。

芹澤和美 (せりざわ かずみ)
アジアやオセアニア、中米を中心に、ネイティブの暮らしやカルチャー、ホテルなどを取材。ここ数年は、マカオからのレポートをラジオやテレビなどで発信中。漫画家の花津ハナヨ氏によるトラベルコミック『噂のマカオで女磨き!』(文藝春秋)では、花津氏とマカオを歩き、女性視点のマカオをコーディネイト。著書に『マカオ ノスタルジック紀行』(双葉社)。
オフィシャルサイト http://www.serizawa.cn

Column

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2017.05.30(火)
文・撮影=芹澤和美