ニューメキシコ州で
画家オキーフが見たものは?

ゴースト・ランチの風景とオキーフの作品を比べて。大人37ドルのランドスケープツアーがある。

 自然と異文化、ジョージア・オキーフの見た絶景、ニューメキシコ州。

 コロラド州パゴサスプリングスからニューメキシコ州に入り、一気に標高が下がると気温はぐんと上昇した。1月に雪をかぶっている大地から乾いた赤土の大地へ。

 約2時間走って、アメリカの現代女性画家ジョージア・オキーフがその土地を愛して長年住んだという「ゴースト・ランチ」に着く。自然がむき出しな感じがする風景は、ニューヨークを離れてここに来たオキーフの心象風景に重なったのだろうか。オキーフ作品には、荒涼としたこの土地そのままの様子が描かれたものがいくつもある。

Ghost Ranch
(ゴースト・ランチ)

所在地 280 Private Dr. 1708, Abiquiu, NM 87510
電話番号 877-804-4678
https://www.ghostranch.org/

 ジョージア・オキーフは、晩年、こことアビキューというサンタフェ近郊の村に住んだ。ジョージア・オキーフの美術館があるサンタフェは、スペイン、メキシコ、そしてネイティブアメリカンと、文化の混ざりあった独特の雰囲気が魅惑的だ。

左:先住民族のプエブロ族の建築方法だったアドビ建築。
右:サンタフェ郊外の荒野にいきなりポップな「ミオ・ウルフ」の看板が。

 からりとして温暖な気候とこの雰囲気がアーティストを呼び寄せるのだろうか。サンタフェ郊外にある「ハウス・オブ・エターナル・リターン」という施設は、「ミオ・ウルフ」というマルチメディア・アーティスト集団が造った飛び切りユニークな体験型アート施設。

 入り口を入ると何代も人が住んだような古い家屋がある。ところが……冷蔵庫や洗濯機の扉、暖炉の中は異界への入り口。未来だったり、モノクロの世界だったりへと、ワープ体験ができる。一度ではなかなか全部を体験できないというほど複雑な構造で、時間を忘れて過ごしてしまいそう。

入り口を入ると普通の家の中のように見えるが、実は……。
こんな世界に通じている。意外な入り口から入る部屋がいくつもあって、全部は発見できないかも。

Meow Wolf/House of Eternal Return
(ミオ・ウルフ/ハウス・オブ・エターナル・リターン)

所在地 1352 Rufina Cir., Santa Fe, NM 87507
電話番号 505-395-6369
https://meowwolf.com/about/visit/

ほの暗い中、お風呂に入って、居酒屋で一杯。ここがサンタフェであるのを忘れそう。「イザナミ・レストラン」にて。

 サンタフェでの夕食は、日本好きのアメリカ人が開いたという地元で大人気の日本料理店「イザナミ・レストラン」へ。

 ここは、温泉ではないが露天風呂も併設する不思議なところ。ひと風呂浴びて、居酒屋のようなレストランで食事をするのが人気のよう。日本酒も揃っていた。スパや宿泊施設もある。

Izanami Restaurant
(イザナミ・レストラン)

所在地 21 Ten Thousand Waves Way, Santa Fe, NM 87501
電話番号 505-982-9304
https://tenthousandwaves.com/food/

 ニューメキシコ州で印象的な日干しレンガの家は、ネイティブアメリカンのプエブロ族に伝わるアドビ建築という手法で造られている。その他にもナバホ族、アパッチ族、ホピ族など数多くの先住民族が今も住んでいる。

 州中央の砂漠の中にある大きな街、アルバカーキ。ここから車ですぐのところにあるペトログリフ・ナショナル・モニュメントは、小高い火山岩の丘に、先住民族が岩に描いた壁画(ペトログリフ)が2万5000以上もある場所だ。

大きな岩がゴロゴロしている丘を登っていくと、いくつもペトログリフが見つかる。とても鮮明で、昨日描かれたよう。

 その9割は14世紀から17世紀の終わりにかけて描かれたもので、文字を持たなかった先住民族にとって、ペトログリフは情報の伝達手段でもあり、また祭礼的な意味合いを持つものもあって、この地では神聖なものであるという。

Petroglyph National Monument
(ペトログリフ・ナショナル・モニュメント)

電話番号 505-899-0205
https://www.nps.gov/petr/

「インディアン・プエブロ文化センター」では、祭礼の服装と共に、自然復活や和平を祈願するサンダンスの儀式など、重要な意味合いを持つダンスについての展示が。

 アルバカーキの街には「インディアン・プエブロ文化センター」があり、狩猟採集を行うプエブロ族の住んでいた頃からの歴史や部族それぞれの文化などが、とても分かりやすく展示されていて、面白い。

Indian Pueblo Cultural Center
(インディアン・プエブロ文化センター)

所在地 2410 12th St. NW, Albuquerque, NM 87104
電話番号 866-855-7902
http://www.indianpueblo.org/

 ユタ州、コロラド州、ニューメキシコ州。お互い隣り合い、どの州も大自然に囲まれているのに、こんなにも色合いが異なるとは。広いアメリカらしいバラエティが楽しめるドライブ旅だった。

【取材協力】
ブランドUSA

https://www.gousa.jp/

ユナイテッド航空
http://united.com/

小野アムスデン道子 (おの アムスデン みちこ)
ロンリープラネット日本語版の立ち上げより編集に携わったことから、ローカルグルメや非日常の体験などこだわりのある旅の楽しみ方を発信するトラベル・ ジャーナリストへ。エアライン機内誌、新聞、ウェブサイトなどへの寄稿や旅番組のコメンテーター、講演などを通して、次なる旅先の提案をしている。
Twitter https://twitter.com/ono_travel

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2017.05.16(火)
文・撮影=小野アムスデン道子