街や人と一緒に歩む
「コミュニティ」を目指して

晴れた日には窓を開け放し、外のカウンター席と店内のテーブル席に座っている人同士が、気軽にコミュニケーションをとれるような工夫も。「知らない人同士が、仲良く話している姿を見ると心が温かくなります」と笑顔を見せる山本さん。

 お店作りに際して、山本さんが何よりも重視するのは、街や人との繋がりだという。その連帯感を自らの目で確かめるべく、日常的に顔を出すことのできる場所にしか出店しないという強いこだわりも。

「PRETTY THINGSを作るにあたり、ターゲット層はあえて設けていません。というのは、さまざまな客層から愛される、街のコミュニティ的な存在になってほしいという思いがあったからです。立地を駒沢オリンピック公園の近くに決めたのも、そこに集うカップルや親子、お年寄りなど、幅広い年代の方々に立ち寄ってもらいたいと考えたからこそ。街や人と一緒に時間を重ねて育っていく、そういうお店が理想的ですね」

 PRETTY THINGSのすぐ側には、同じく山本さんがオーナーを務めるダイニングカフェ「BOWERY KITCHEN」が。歩いて数分の距離にあるということで、両店を行き来しながら飲食を楽しむ人も多い。

窓際に座って外の風景を眺めながら、ゆったりと食後のコーヒーを。
「多くのレコードが置いてあるので、このお店をコーヒーショップではなく、レコード屋さんだと思っている方もいるんです(笑)」

「昔から、そのエリアに同じようなテイストのお店が3つあれば、自ずとそこに人が集まり、街ができると言われているんです。事実、海外でセンスの良いレコード屋さんを訪ねると、その付近には必ずと言っていいほどに、ユニークな本屋さんやおしゃれなセレクトショップ、そして美味しいコーヒーショップがあったりして、皆それらを交互に巡りながら趣味のひとときを楽しんでいます。駒沢には、うちのコーヒーショップと食堂(BOWERY KITCHEN)があるので、あとひとつ何かお店があればいいなと思っていたところ、PRETTY THINGSの隣の物件が空いたので、親しいスタイリストの熊谷隆志くんに声をかけ、彼が2014年に『WIND AND SEA』というセレクトショップを開いてくれました。こうして、ご飯を食べ、服や雑貨を見て、コーヒーを飲むという、駒沢にわざわざ足を運ぶ立派な動機が生まれたというわけです! ハイセンスなカルチャーが生まれるニューヨークのブルックリンのように、駒沢を『コマックリン』にしたいですね (笑)」

店内で存在感を放つ、真っ白なシャンデリアは、山本さんがニューヨークのセレクトショップで惚れ込んだ逸品。

2017.04.26(水)
文=中山理佐
撮影=佐藤 亘