クールなSuchmosに注目!

伊藤 ローカライズの仕方も間違えると凄くダサくなりますからね。気を付けないと。このコラムがアップされるときにはLAでライティングキャンプをしています。アーティストの名前はあげられませんが、トレンドに敏感なアーティストに向けて曲を作ってきます。2016年の10月にLAでライティングキャンプしたんですけど、そこで作ったほとんどの楽曲は行き先が決まっています。今回も超トレンド感があってカッコ良くローカライズされたサウンドをいち早く日本の音楽ファンに届けたいです。

山口 世界のポップスの流行を作っているLAとホットラインができることは、Jポップの進化に繋がると同時に、日本人アーティストがグローバルに活躍することに繋がると思います。僕はスポーツに喩えるのが大好きなのですが、日本人大リーガーの存在抜きにWBCでの日本の優勝は無かったと思います。LAとTOKYOのホットラインでJポップを盛り上げていきましょう。

伊藤  ですね。今年の後半くらいには日本でもザ・チェインスモーカーズなどの新しいトレンドを掴んだアーティストが出てくるんじゃないかな。これからデビューする素晴らしいアーティストもいるし、逆に今までのブランドを投げ捨てて全く新しいことをしようとしているベテランもいるし。自分の周りだけでも面白い動きがあります。ちょっとアイドル疲れした今年は、クールなものが時代を掴むように思っています。山口さんはどう思いますか?

山口 Suchmosに注目しています。有名なジャズマン「ルイ・アームストロング」のニックネームをバンド名にして、ジャミロクワイみたいなサウンドで、懐かしさもあるんだけれど、今日感もあります。

伊藤 大人の女性が好きそうなサウンドですよね。テレビCMがきっかけだと思いますけど、突如現れた新星って感じで、音楽業界的にもクールな方向にいくカンフル剤になりそうです。

山口 先日、ロンドンのMusic Allyというデジタルマーケティング会社の人達が来日したので、ミーティングしたのですが、その中で「何故Spotify Japanのランキングが洋楽アーティストばかりなのだ?」と質問されて答えに窮しました。「まだ楽曲提供していないアーティストも多い、日本のレーベルは保守的だから時間がかかるんだ」みたいな説明をしたのですが、その時の資料でベスト20に入っている唯一の日本人アーティストがSuchmosだったんです。ストリーミングサービスのプレイリストからのヒットが日本でも沢山でてくると思います。音楽性と同じくらい、アーティストとしてのスタンスやフィロソフィーが問われる時代ですね。

ザ・チェインスモーカーズ
「クローサー feat. ホールジー」

2016年7月29日配信開始
■ザ・チェインスモーカーズは、ドリュー・タガートとアレックス・ポールの2人によって2012年に結成されたDJ兼プロデューサーデュオ。2014年に「セルフィー」をヒットさせたことで一躍有名に。「クローサー」は女性シンガーのホールジーをフィーチャーした12作目のシングル。初の全米1位を獲得した。
■作詞・作曲/Halsey、Shaun Frank、Frederic Kennett & Andrew Taggart
http://www.sonymusic.co.jp/artist/thechainsmokers/

【動画サイト】
「クローサー」

https://www.youtube.com/watch?v=0zGcUoRlhmw

山口哲一 (やまぐち のりかず)
(株)バグ・コーポレーション代表取締役、コンテンツビジネス・エバンジェリスト、音楽プロデューサー。「デジタルコンテンツ白書」(経済産業省監修)編集委員。経済産業省「コンテンツ産業長期ビジョン検討委員会」委員。国際基督教大(ICU)高校卒。早稲田大学在学中から音楽のプロデュースに関わり、中退。1989年、バグ・コーポレーションを設立。音楽プロデューサーとしてSION、村上“ポンタ”秀一のマネージメントや、東京エスムジカ、ピストルバルブ、Sweet Vacationなどの個性的なアーティストをプロデュースする一方、音楽ビジネスとITに関する実践的な研究を行っている。プロデュースのテーマは、新しいテクノロジーの活用、グローバル展開、異業種コラボレーション。2011年頃から著作活動を始め、国内外の音楽ビジネス状況の知見を活かし、音楽(コンテンツ)とITに関する提言を続けている。エンタメ系スタートアップを対象としたアワード「START ME UP AWARDS」をオーガナイズし、プロ作曲家育成「山口ゼミ」や「ニューミドルマン養成講座」を主宰するなど、次世代の育成にも精力的に取り組む、異業種横断型のプロデューサー。近著に『新時代ミュージックビジネス最終講義』(リットーミュージック)、『10人に小さな発見を与えれば、1000万人が動き出す。』(ローソンHMV)、『最先端の作曲法 コーライティングの教科書』(リットーミュージック・伊藤涼との共著)、『とびきり愛される女性になる。 恋愛ソングから学ぶ魔法のフレーズ』(ローソンHMV・伊藤涼との共著/「ラブソングラボ」名義)、『DAWで曲を作る時にプロが実際に行なっていること』(リットーミュージック)、『世界を変える80年代生まれの起業家 起業という選択』(スペースシャワーブックス)、『プロ直伝! 職業作曲家への道』(リットーミュージック)などがある。
Twitter https://twitter.com/yamabug
BLOG http://yamabug.blogspot.jp/
詳細プロフィール http://yamabug.blogspot.jp/2010/05/profile.html

伊藤涼 (いとう りょう)
音楽プロデューサー、ソングライター。「青春アミーゴ」などのミリオンセラーをプロデュース、後にフリーランスに。ソングライターとして、乃木坂46「走れ!Bicycle」、AKB48「ここにいたこと」などの作品がある。作詞アナリスト、フードミュージックプロデューサーとしても活躍。論理的で明晰な分析力に注目。著書に『作詞力 ウケル・イケテル・カシカケル』(リットーミュージック)、山口哲一との共著に『最先端の作曲法 コーライティングの教科書』(リットーミュージック)がある。
マゴノダイマデ・プロダクション http://www.mago-dai.com/
ブログ「伊藤涼の音楽」 http://ameblo.jp/magodai/
伊藤涼が主宰する作詞研究室「リリック・ラボ」 
https://www.facebook.com/lyric.laboratory/
L.A.↔TOKYO の音楽を繋ぐクリエイターチーム「LATKO.」 
http://latko.jp/

Column

来月、流行るJポップ チャート不毛時代のヒット曲羅針盤

音楽ビジネスとITに精通したプロデューサー・山口哲一。作詞アナリストとしても活躍する切れ者ソングライター・伊藤涼。ますます混迷深まるJポップの世界において、この2人の賢人が、デジタル技術と職人的な勘を組み合わせて近未来のヒット曲をずばり予見する!

2017.03.15(水)
文=山口哲一、伊藤涼