ファッションが
コミュニケーションと自己表現に変わるまで

 チャールズ皇太子のフィアンセとして初めて公式行事に参加したときに、ダイアナ元妃が着ていたのは、オフショルダーの黒のドレス。それまでの王室のしきたりでは、黒は喪に服すときだけと決められていた色でした。

1986年、サウジアラビアに公式訪問した際に着用したドレス。サウジアラビアの国鳥であるハヤブサをあしらい、お国柄を考えて長袖に。キャサリン・ウォーカーのデザイン。(C)Historic Royal Palaces, Richard Lea Hair
左:マーレイ・アーベイドのデザインによる赤と黒のコントラストが印象的なドレス(1986年)。スペインへの公式訪問の際に、片手に黒、片手に赤の長手袋と一緒に着用されたもの。(C)V&A, Murray Arbeid
右:ジーナ・フラッティーニのデザインによるシルクシフォンのドレス。1990年の公式ポートレート撮影と1991年のリオデジャネイロ公式訪問の際に着用されたもの。このブラジル訪問時に、エイズ患者と手袋をせずに握手をしたことが話題になりました。(C)Historic Royal Palaces, Richard Lea Hair

 若き日の元妃こそ、そういったルールを知らないがゆえのチョイスだったのかもしれませんが、その後次第に確信犯的に少しずつ王室のしきたりを変化させていきました。

 例えば、握手をするときに、直接手に触れたいから、という理由で手袋をしなかったダイアナ妃。1991年にエイズ患者との握手の際にも手袋をしなかったことも話題になりました。まだまだエイズという病気に対する世間の知識が乏しかった時代のことです。

左:当時、一般にも流行していた大きな肩パッドやスパンコールを取り入れたドレス(1986年)。キャサリン・ウォーカーのデザイン。(C)Historic Royal Palaces, Richard Lea Hair
右:「エルビス・ドレス」と呼ばれているパールがちりばめられたシルクのドレス(1989年)。デザイナーのキャサリン・ウォーカーは、エリザベス1世のネックラインにインスピレーションを得てこの印象的な襟をデザインしたのだとか。(C)V&A

 そのほかにも、ロイヤルファミリーの女性として初めてパンツ姿で登場したり、帽子をかぶらなかったりと、ロイヤルファッションに新しい風を吹き込んだのが元妃でした。今回のエキシビションでは、衣装とともにそれを着用している元妃の写真もあわせて展示されており、手袋や帽子を身につけていない元妃の姿をそこに見ることができます。

デザイナー、キャサリン・ウォーカーが「ロイヤル・ユニフォーム」と呼んだ、ダイアナ元妃といえば、これ、と言っても過言ではないお馴染みのスーツ(1996年)。(C)Historic Royal Palaces, Richard Lea Hair

文・撮影=安田和代(KRess Europe)