沖縄にインスパイアされた名曲は数多い

伊藤 この手の沖縄民謡とJポップのミクスチャーは数年に一度くらいで大ヒット曲が生まれてますよね。BEGINの「島人ぬ宝」や夏川りみの「涙そうそう」など、普通は沖縄出身のアーティストによるものなんですけど、「島唄」のTHE BOOMと「満月の夕」のソウル・フラワー・ユニオンは沖縄出身じゃないんですよ。あくまでも沖縄のルーツ・ミュージックにインスパイアされた音楽ってことになります。今回の遊助こと上地雄輔は神奈川県出身ですが、祖父が宮古島出身ということで、沖縄にルーツを持ちながらインスパイア組でもあるミックスと言えますね。

山口 そうですね。沖縄ルーツ以外の音楽家が、沖縄をリスペクトしてつくる楽曲にも名曲はいくつかありますね。「流れ」は、曲の最初のところで沖縄感をしっかり打ち出して、大サビで沖縄音階から離れるところに開放感を感じました。沖縄感を良い意味で薄めて、エッセンスだけ使っていますね。

伊藤  沖縄って日本人のルーツがあるんですかね? 日本人って沖縄音楽が好きですよね。2016年にヒットした浦ちゃんこと桐谷健太が歌った「海の声」もそうですね。歌い手の桐谷健太は大阪出身なんですが、作曲がBEGINの島袋優です。なんとなく安心できるっていうか、懐かしさを感じます。

山口 沖縄は琉球王朝からの独自の文化が、細かく言えば、石垣島地域は八重山王朝の文化があったりしますが、縄文時代まで遡っていくと、日本人のDNAに繋がるところがあるのかもしれません。

伊藤 縄文顔のひとは東南アジアから沖縄を経由して日本中に広がっていったって聞いたことあります。そう考えると日本人が沖縄音楽に郷愁を覚えるのは当たり前なのかもしれないですね。

山口 研究者は「民族的な記憶」とか言いますよね。ロマンティックな表現です。僕は東京エスムジカというツインボーカルのグループを立ち上げた時に、一人は在日コリアン四世で、もう一人は石垣島出身という編成にして、FM沖縄でプッシュしてもらったりしたので、沖縄の歴史は少し勉強しました。僕は中高生の頃は文化人類学者を目指していて、文化のルーツみたいな話は大好きなので、趣味でもあります(笑)。

伊藤 おーそんな一面があったとは(笑)。

山口 沖縄は数々のスターアーティストを生み出していますが、音楽がカルチャーとして根付いている島ですね。おそらく音楽だけで食えているインディーズアーティストは沖縄が一番多いと思います。ライブハウスやバー、レストランで歌っていて、生計が成り立つんです。

伊藤 そういえば、沖縄出身アーティストのプロデュースをはじめましたね?

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2017.03.01(水)
文=山口哲一、伊藤涼