これまでの表紙を参考に
オリジナルキャラクターをデザイン

制作最終段階のイラストのスクリーンショット。拡大してみると、凛とした視線や長いまつ毛、流れるような髪の複雑な動き、洋服のボタンやプリーツ、ステッチといったディテールなど、緻密な書き込みがキャラクターの魅力を引き立てているのが伝わってくる。

●物語からキャラクター像を膨らませていく

 アニメ制作の最初にあるのはまず物語です。企画段階の容姿や性格など登場人物のおおまかな情報からイメージを広げて、こんな性格ならこんな表情やしぐさをするかなとか、こんな服を着るかなと考えていきます。

 アニメの絵は記号論的なところがあるんです。例えば「かわいさの記号」。目のハイライトが多くキラキラしていたり、まつ毛が長かったりしたら目を惹きますよね。『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』のヒロインの“めんま”の場合は、銀髪でまっ白なワンピース。目を惹く記号が多ければメインキャラらしくなる。そういうコントロールは絵ならではです。

トレンドのパジャマスタイルを着て
凛と立つキャラクター

左:最初期のラフ。ほか2パターンのラフとの検討を経て、このパターンに決定。この段階からCREAの過去の表紙を意識した、凛とした大人の女性像は一貫して変わっていない。
右:仮塗り。キャラクターが着た衣装はバーバリーの最新コレクション。特徴的なデザインのトレンチコートの中に、トレンドのパジャマスタイルを取り入れた。

●普段にはないバランスのコーディネートは
描いていて面白かった

 記号で言うと、ファッションは実は苦手ですね(笑)。雑誌を見たり街で人を観察したり、ものすごく調べて描きます。『君の名は。』の奥寺先輩が最近では一番苦労しました。彼女は都会サイドの瀧君たちのなかでも、一番都会的な女性なので。着こなしのパターン含め10~15ぐらいのデザイン画を描いた気がします。

 今回表紙を描くのにはバックナンバーを参考にしました。よくある女性のバストショットを大きく見せる表紙はほぼなくて。少し引いた構図で、モデルの動きやしぐさ、背景、そして着ている服で、人となりを表現している。カメラ目線が少ないのもスナップ的でストーリー性がある。それらを意識してデザインを進めました。

 着ている衣装は自分では絶対思いつけないコーディネート。でも普段ないバランスなのが描いていて面白かったです。アニメの場合、動かすためにそれほど複雑なものは描けないんです。表情や動きにより注力するので。でも今回の服なら、アニメでもいけるかも。ストライプ柄だけは大変そうですけれど(笑)。

田中将賀(たなか まさよし)
1998年『プリンセスナイン 如月女子高野球部』でアニメーターデビュー。2006年『家庭教師ヒットマンREBORN!』でキャラクターデザインを初担当。そのほかキャラクターデザインを務めた代表作として、『とらドラ!』『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』、映画『心が叫びたがってるんだ。』『君の名は。』など。自身初の作品集『田中将賀アニメーション画集』も昨年出版された。

【表紙イラスト衣装クレジット】
トレンチコート 220,000円、シルクシャツ(メンズ) 78,000円、ストライプシャツ(メンズ) 60,000円、パンツ 94,000円/バーバリー(バーバリー・ジャパン)

バーバリー・ジャパン
電話番号 0066-33-812819

2017.02.06(月)
Character Design & Illustration=Masayoshi Tanaka
Styling=Tamao Iida
Fashion direction=Asako Kanno

CREA 2017年3月号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

この記事の掲載号

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定価780円