鹿しゃぶ鍋をテラスのコタツで!?

森に囲まれているキャビン。自然の眺めを楽しむためにあるかのよう。

 夏のグランピングだと、屋外での食事もいろいろと想像しやすいのだが、積雪もあるエリアでの冬のグランピングではどんなものか。

 もちろん年間通して、屋内のダイニングで山の幸やワイルドなジビエのグリルなどを味わうという選択肢もあるが、宿泊のキャビンを生かした驚きのアイデアがあった。「星のや富士」では赤松の森の中に、河口湖を見渡す開口部が設けられたキャビンが並んでいる。

余計なもののないミニマムなキャビンは、外の風景が引き立つ。
キャビンには、長靴やダウンコートも用意されている。

 室内はシンプルな造りになっている。柔らかな間接照明に寝心地のよいベッド、全面ガラスの窓の方を向いて寛げるソファ。そして、窓の外には広々としたテラスリビングがある。そのテラスリビングには、なんとコタツがセッティングされている。

テラスリビングに登場のコタツ。ぬくぬくと外の雰囲気が楽しめてうれしい。

 すべての部屋に備えられたこのテラスリビングは、ごろんと横になって空を眺めたり、朝食を食べたりできるよう、座れる造りになっているのだが、コタツとは! 外にいながらぬくぬくの天国。そこでいただける夕食が、富士山麓のジビエ料理“山麓の鹿しゃぶ鍋”だ。

野菜もいっぱいの鹿のしゃぶしゃぶ鍋は、春菊、ポン酢、ナッツ類ペーストと3種のつけだれで。

 野性味あふれるが、高タンパクで低カロリー、鉄分やビタミンB2が豊富な鹿肉。おいしさを左右する捕獲後の血抜きなどの処置が上手な、河口湖の名猟師から購入するという鹿肉は、臭みがない。外は息が白くなる寒さでも、コタツに入って、滋味豊かな鹿しゃぶ鍋を食べれば、身体がポカポカしてくる。

左:軽くしゃぶしゃぶした鹿肉は、臭みがなく柔らかい。
右:こんな風に、外で夜景を見ながら鍋を囲める。

 河口湖畔に光る町の明かりを遠くに眺めながら、鹿しゃぶ鍋を堪能した後は、こちらもアウトドアクッキング風のデザートを。自分でコッフェルを使って、信玄餅のような歯触りのよい餅をカラメリゼしてアイスクリームを添える。

信玄餅風のデザートの仕上げは自分で。ちょっとアウトドアごはん気分。

 「こんなにも楽々で気持ちいいアウトドアの食事があったとは」と驚きながらの夕食を終えて、元気があればクラウドテラスに上がって、焚き火ラウンジのバーで一杯やりながら闇夜にきらめく星を眺めても。

夜にクラウドテラスで開店するバーには、国産ウィスキーの有名銘柄がずらり。

 なんとも贅沢な冬のグランピング、確かにグラマラスだ。後篇では、ココでしか体験できない「星降る森の空中テント」やミステリーゾーン・樹海のネイチャーツアーをレポートする。

星のや富士
所在地 山梨県南都留郡富士河口湖町大石1408
電話番号 0570-073-066(星のや総合予約)
http://hoshinoyafuji.com/

小野アムスデン道子 (おの アムスデン みちこ)
ロンリープラネット日本語版の立ち上げより編集に携わったことから、ローカルグルメや非日常の体験などこだわりのある旅の楽しみ方を発信するトラベル・ ジャーナリストへ。エアライン機内誌、新聞、ウェブサイトなどへの寄稿や旅番組のコメンテーター、講演などを通して、次なる旅先の提案をしている。
Twitter https://twitter.com/ono_travel

Column

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2016.12.24(土)
文=小野アムスデン道子
撮影=鈴木七絵