世界でも珍しい「失恋博物館」

「失恋博物館」は、旧市街のグラデッツ側にある。

 ザグレブ市内には博物館や美術館が多数あって見どころとなっているが、旧市街に珍しいテーマの博物館があるというので行ってみた。

 2006年にオープンした、その名も「失恋博物館」だ。日本のガイドブックではこのように訳されているが、英語名は「Museum of Broken Relationships」。直訳すると、「別離博物館」だろうか。

入り口には紙で作られたクリスマスツリーが飾られていた。
それぞれの物語を日本語に翻訳した解説を借りることができる。

 館内には、男女間だけでなく、家族、友達など、さまざまな別れにまつわる物と物語が展示されている。それらの物、手紙は、なんと世界中から送られてきたのだという。展示物の説明はクロアチア語と英語だけだが、入り口で日本語の解説を貸し出してくれるので、日本語で鑑賞することができる。

ひとつひとつに物語があるので、時間をかけて鑑賞する人が多い。

 もちろん、男女の別れの物語も多数あるが、戦争が引き裂いた友情だったり、愛する人の死だったり……。飾られている物は芸術作品というわけではなく、どこにでもありそうな物なのだけれど、その物語を読むと悲しくなるものばかり。

ナイキのラグビーボール。いつもこのボールを持っていた彼が、ある日突然出て行ってしまった。せめてボールを取りに来るかと待ったものの、二度と来ることはなかったという。
赤い靴。お互いの20年間のドラマの末に結ばれたものの別れてしまったカップル。彼が彼女に贈った赤いハイヒール。

 博物館では「心にできた傷が少しでも癒されますように」と、引き続き寄贈を受け付けているという。来館者には「この展示を見て、より意義ある自分探しへのきっかけになってくれたらと願っています。みなさまの痛みが和らぎますように」とのメッセージも。

 このコレクションはさまざまな国を巡回し、2011年にはヨーロッパでもっとも奇妙で冒険的な博物館ということで、ケネス・ハドソン博物館アワードを受賞しているという。日本からでも思い出の品と物語を寄贈することができるので、捨てきれない物がある方は送ってみてはいかが?

館内には土産物店やカフェもある。

Museum of Broken Relationships(失恋博物館)
所在地 Ćirilometodska 2, 10000 Zagreb
電話番号 01-4851-021
http://brokenships.com/

2016.12.20(火)
文・撮影=たかせ藍沙