世界を旅する女性トラベルライターが、これまでデジカメのメモリーの奥に眠らせたままだった小ネタをお蔵出しするのがこのコラム。敏腕の4人が、交替で登板します。

 第141回は、小野アムスデン道子さんが世界に冠たるワインの本場、ボルドーのシャトーを巡り歩きます!

一日いても飽きないワイン博物館

貴腐ワインの名産地として有名なボルドーのソーテルヌで泊まった「シャトー・トリリオン」からの眺め。

 ボルドーと言えば、“赤ワイン”、それも“高級な銘柄が多い”というイメージなのでは? まず、ボルドーでは、醸造所のことをシャトーという(ちなみに、こちらもワイン産地の雄であるブルゴーニュではドメーヌという)。

 何も城でワインを造っているわけではないけれど、シャトーのようなりっぱな醸造所が多いのも確か。全体でその数、何千と星の数ほどある。憧れのボルドーのワイナリー、訪れてみると、その長い伝統だけにとどまらない、新しい発見と出会いに満ちていた。

月の港ボルドーのブルス広場。石畳と壮麗な建物が美しい昼の顔。
同じくブルス広場。水鏡ことミローワール・ドーにきれいな建物が映り込む夜の顔。

 ボルドーはフランスの南西部、パリから飛行機で約1時間15分。空港に着くと、荷物の受け取り場所にいきなり大きなワインボトルのオブジェ。車で20分ほどで市内へ。湾曲するガロンヌ川に囲まれて発達したことから“月の港ボルドー”と呼ばれ、歴史地区が世界遺産に登録されていて、石畳の街並が美しい。

 ボルドーでワイナリー巡りの前に訪れたいのが、このガロンヌ川沿いに2016年6月に出来たワインの博物館「シテ・デュ・ヴァン」。

ガロンヌ川のほとりで輝く「シテ・デュ・ヴァン」。隅田川沿いのあの黄金のオブジェにちょっと似ている。

 まず、黄金が渦を巻いたような外観に驚かされる。ブドウに付いたカタツムリ? いやいや。これはデキャンタを模して作ったもので、木(熟成樽)、ガラス(ワイングラス)、ステンレス(発酵タンク)と、全てワインに関連する素材で出来ている。ワインについての歴史や世界各国のワインの紹介や知識など体験型の展示に工夫が凝らされていて、ワインのテーマパークのよう。

チューブの先からガラスのケースに入っているものの匂いが出て来る仕組み。

 例えば、ワインのテイスティングで「うーん。この深紅のワインは、スモーキーなアロマにちょっとチョコレートのような香りもありますね」などといったコメントをするために、花や果実、革製品やコーヒーなどワインに感じる香りをかいだり、似た色の表現を探してみたりという体験ができる。

 ここは日本語を含む8カ国語のオーディオガイドがあるのだが、手元の機器を各展示のイヤホンマークにかざすと説明がその言語で聞けるだけでなく、展示の表示もその言語が出て来る。日本語で体験展示も楽しめるというのがすごい。

展望台の試飲コーナーには20種類のワインが並ぶ。中にはジョージアやメキシコなどの珍しいワインも。

 そのほか、ワインとフードのマリアージュを見せるデジタルテーブルや、クイズでワインのトリビアが分かるコーナーなど、プロジェクションマッピングや3Dなどのテクノロジーを駆使しての展示は、本当に面白くて、まる1日いても時間が足りないくらい。入場料は20ユーロで、オーディオガイドと最上階にある展望台での試飲も1杯付いてくる。

 ボルドー観光局のインフォメーションセンターもあって、ワイナリーのツアー予約もできるので、ワイナリー巡りの最初に立ち寄るのがおすすめ。市内からはトラムで行くか、ガロンヌ川の両岸にある桟橋から水上バスで博物館のすぐ側まで行くことができる。

La Cité du Vin(シテ・デュ・ヴァン)
所在地 134-150 Quai de Bacalan, 33300 Bordeaux
電話番号 05-56-16-20-20
http://www.laciteduvin.com/

2016.10.13(木)
文・撮影=小野アムスデン道子