バルセロナ貴族のお屋敷で楽しむ
中世風のドラマティックなディナー

ユーモアを交えてコーナーごとに詳しい解説をしてくれるガイドさん。文学アカデミーの本部として使われている館内には、18世紀から続くこのアカデミーの歴代会員や、ガウディを含めカタルーニャを代表する文化人などの肖像画が多くかけられている。建物は、ローマ時代の城壁の一部をうまく取り入れて建てられており、写真左奥に見える庭園風パティオの壁もその一例。当時のフレスコ画も残っている。

 古くはローマ時代からの歴史ある建物が今もたくさん残るバルセロナのゴシック地区。その一角にあるレケセンス邸では、13世紀から続くその館をガイド付きで見学するとともに、中世風ディナーを楽しめるプログラムを提供しています。

 建物はいかにもゴシック地区らしい路地の奥にあり、時間になって入口が開けられると、中から現れるのは中世の騎士。出だしから雰囲気満点です。

左:チケットを確認し、いかめしくうなずいて通してくれる騎士。「合言葉は?」などとアドリブで投げかけてくる質問にお客さんもウィットをきかせて対応。
右:騎士のチェックを受けて入口を抜けると、このパティオに。今にも2階の玄関から貴婦人が現れそうな雰囲気だが、レケセンス家は1700年頃には家系が途絶えてしまい、現存する子孫はいないそう。1917年以降、文学アカデミーの本部となった。

 ほの暗い入口の通路をぬけると、そこにはまさに「昔の貴族のお屋敷」のパティオが広がっています。まずはウェルカムドリンクをいただきながら、パティオを中心にした館のたたずまいを存分に楽しみましょう。その間も、使用人や道化師(などに扮した役者さんたち)がお客さんに声をかけたり、芸を披露したりして、場を盛り上げます。

先々代のアカデミー会長の書斎。壁にかかっているのは、ジュリオ・ロマーノ作の婦人像(複製。オリジナルはルーヴル美術館蔵)。1518年の作品で、モデルとなっているのは実際にこの館に住んでいたイサベル・デ・レケセンス。当時その類まれなる美貌でヨーロッパ中に広くその名を知られていた。

 参加者が揃ったら、スペイン語、英語など、言語ごとに小グループに分かれ、ガイドさんに連れられて建物の内部へ。この館は、もともと13世紀に貴族レケセンス家の邸宅として建てられたものですが、現存する大部分は15世紀に改修されたゴシック様式の建物です。

 隆盛を誇ったレケセンス家でしたが、長い年月の間に子孫が途絶えてしまい、家系は消滅、その後紆余曲折を経て、館は現在カタルーニャ文学の研究などを行う文学アカデミー(Reial Acadèmia de Bones Lletres)の本部として使用されています。そのため、内部のほとんどは近代的なしつらえに改修されていますが、それでもそこここに往時の趣をとどめています。

文・撮影=坪田みゆき