【次に流行るもう一曲】
KANA-BOON「Wake up」

関西発の若手ロックバンドの旗手

伊藤 2曲目はKANA-BOON、メジャー10枚目のシングルの『Wake up』。この曲は、朝のワイドショーを舞台にした映画『グッドモーニングショー』の主題歌になっています。

山口 ブレイクしましたね。

伊藤 彼らは大阪出身の4人組ロックバンド。2006年に高校の軽音部で結成して地元大阪でライブ活動を開始。2012年にキューンミュージックの20周年記念オーディションで4000組の中からグランプリに選ばれ、翌年に同レーベルからメジャーデビューしました。

山口 6~7年くらい前でしょうか、関西のバンドシーンが元気だと言われていて、注目株のバンドとして存在を知りました。

伊藤 メジャーデビューから3作連続でオリコンウィークリーランキングのトップ10入り。6枚目のシングル「なんでもねだり」で日本を代表する若手ロックバンドの地位を不動のものにした感じがした。だけど、彼らのサウンドを聴く限り、そこまで飛び抜けた“何か”を感じないし、決してビジュアルや奇抜さで売ってる感じもしない。なんとなく、事務所であるヒップランドミュージックが肝のような気がしているんだけど、山口さんはその辺に詳しいんじゃないですか?

山口 そうですね。バンプ・オブ・チキン、サカナクションとスターバンドを生み出しているヒップランドの野村達矢さんは、尊敬する業界の先輩です。ライブハウスシーンからアリーナツアーまでバンドを押し上げる作業をとても丁寧にやられるメチャメチャ優秀なマネージメントプロデューサーです。特に最近は、追い風が吹いていて、勝ちまくっているという印象です。

伊藤 オレもジャニーズ・エンタテイメント時代に野村さんにはお会いしたことあるんですけど、この人は本物の音楽マンだなって感じた記憶がありますね。

山口 もちろんミュージックラバーです。同時に、テクノロジーにも明るくて、VR系のクリエイターのマネージメントを始めて、「VRDG+H」というイベントも企画して、テクノロジーを取り入れた新しい表現に挑戦しています。僕は、「エンターテック」という言葉を広めたいと思って、「TECHS(テックス)」〈外部サイト〉というイベントを始めるので、是非、観に来て下さい! Yun*chi、小南千明、SpininGReen、AIMIなど出演で、「テクノロジーでエンターテインメントを拡張する」がテーマです。

伊藤 山口さんらしい切り口、面白そうですね。音楽マンって音楽好きであるがゆえに視野が狭くなりがちなんだけど、野村さんはワイドオープンな視野でエンターテインメントの未来が見えているんでしょうね。そんな彼がKANA-BOONという素材を知って、ちゃんと調理してきたんでしょうね。もちろん“売り方”だけで成功できるほど甘くない音楽業界、バンドとしてのクオリティの高さは感じる。特に作詞作曲を手掛けるヴォーカル・ギターの谷口鮪、彼が作り出す世界観の生っぽい質感は独特なものがある。まだまだ突き進んでいく勢いを感じますね。

KANA-BOON「Wake up」
キューンミュージック 2016年10月5日発売
初回生産限定盤[CD+DVD]1,500円、通常盤[CD]1,165円(税抜)
■堺出身のKANA-BOONは、2013年にメジャーデビュー。3rdアルバム『Origin』を引っ提げて2016年に行った香港・台湾を含む全16カ所、21公演の大規模ツアーでは計5万人を動員した。本作の表題曲は、『踊る大捜査線』の脚本家として知られる君塚良一が監督を手がけた映画『グッドモーニングショー』の主題歌。
■「Wake up」作詞・作曲/KANA-BOON 編曲/KANA-BOON
http://www.kanaboon.com/

【動画サイト】
「Wake up」

https://www.youtube.com/watch?v=Iu_pQaLRT-Q

山口哲一 (やまぐち のりかず)
(株)バグ・コーポレーション代表取締役、コンテンツビジネス・エバンジェリスト、音楽プロデューサー。「デジタルコンテンツ白書」(経済産業省監修)編集委員。経済産業省「コンテンツ産業長期ビジョン検討委員会」委員。国際基督教大(ICU)高校卒。早稲田大学在学中から音楽のプロデュースに関わり、中退。1989年、バグ・コーポレーションを設立。音楽プロデューサーとしてSION、村上“ポンタ”秀一のマネージメントや、東京エスムジカ、ピストルバルブ、Sweet Vacationなどの個性的なアーティストをプロデュースする一方、音楽ビジネスとITに関する実践的な研究を行っている。プロデュースのテーマは、新しいテクノロジーの活用、グローバル展開、異業種コラボレーション。2011年頃から著作活動を始め、国内外の音楽ビジネス状況の知見を活かし、音楽(コンテンツ)とITに関する提言を続けている。エンタメ系スタートアップを対象としたアワード「START ME UP AWARDS」をオーガナイズし、プロ作曲家育成「山口ゼミ」や「ニューミドルマン養成講座」を主宰するなど、次世代の育成にも精力的に取り組む、異業種横断型のプロデューサー。近著に『新時代ミュージックビジネス最終講義』(リットーミュージック)、『10人に小さな発見を与えれば、1000万人が動き出す。』(ローソンHMV)、『最先端の作曲法 コーライティングの教科書』(リットーミュージック・伊藤涼との共著)、『とびきり愛される女性になる。 恋愛ソングから学ぶ魔法のフレーズ』(ローソンHMV・伊藤涼との共著/「ラブソングラボ」名義)、『DAWで曲を作る時にプロが実際に行なっていること』(リットーミュージック)、『世界を変える80年代生まれの起業家 起業という選択』(スペースシャワーブックス)、『プロ直伝! 職業作曲家への道』(リットーミュージック)などがある。
Twitter https://twitter.com/yamabug
BLOG http://yamabug.blogspot.jp/
詳細プロフィール http://yamabug.blogspot.jp/2010/05/profile.html

伊藤涼 (いとう りょう)
音楽プロデューサー、ソングライター。「青春アミーゴ」などのミリオンセラーをプロデュース、後にフリーランスに。ソングライターとして、乃木坂46「走れ!Bicycle」、AKB48「ここにいたこと」などの作品がある。作詞アナリスト、フードミュージックプロデューサーとしても活躍。論理的で明晰な分析力に注目。著書に『作詞力 ウケル・イケテル・カシカケル』(リットーミュージック)、山口哲一との共著に『最先端の作曲法 コーライティングの教科書』(リットーミュージック)がある。
マゴノダイマデ・プロダクション http://www.mago-dai.com/
ブログ「伊藤涼の音楽」 http://ameblo.jp/magodai/
伊藤涼が主宰する作詞研究室リリック・ラボ 
https://www.facebook.com/lyric.laboratory/?ref=ts&fref=ts

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2016.09.30(金)
文=山口哲一、伊藤涼